(仁藤夢乃氏らの講演会を主催するアジュマブックス、ウェブサイトより)
3月11日、土曜日に開かれる仁藤夢乃氏の登壇イベントについて、主催者の有限会社アジュマ(代表、北原みのり氏)が、申し込みを受け付けた後に途中から、仁藤夢乃氏への批判をした人物の参加を拒絶するなど条件を追加していたことが分かった。
すなわち、アジュマに問い合わせたところ、現在ホームページにある新たな条件は2月25日と3月7日にメールで予約者に送信したという。そこでメールを確認したところ、以下のような内容で送信されていた。
(1通目のメール)
すなわちーーーご参加をご予定の皆様へーーーという項目によると「受付で写真付きの身分証明書を提示していただきます。ご予約時のお名前と一致しない場合はご入場できません(生活上の姓と行政登録の姓が違う場合などはお伝え下さい)。予約時にご住所の入力がなかった方はご住所を確認させていただく場合があります。 2:スマホを含む録音・撮影器機は預からせていただきます。 3:これまでにColaboや仁藤夢乃さんへの誹謗中傷が確認されている方の入場はお断りします」とある(太字部筆者)。
まず、2月22日付で一般社団法人Colaboは当サイトを相手に訴訟を提起した旨を発表しているところ、筆者にとって死活的な(あるいは、他のメディア関係者にとっても資金石となる項目は)3つ目である。「これまでにColaboや仁藤夢乃さんへの誹謗中傷が確認されている方の入場はお断りします。」というが、「誹謗中傷」の範囲が分かりにくい。
これについてはおそらく、主催者が判断すると思われるが、いかにもエコーニュースの関係者は「誹謗中傷した」と言われそうである。ただ、自ら誹謗中傷したとは筆者は考えていない。というか「私は誹謗中傷をしました」と誰かが言うとしたら、名誉毀損訴訟の敗訴後の謝罪文などぐらいではないか。返金対応を求めるのに「私は誹謗中傷者です」と告白しないといけないというのはどんな罰ゲームだろうか
なお、こちらもメールで事前に2月20日付で質問をしていたが、それらに対する返事はなかった。すなわち 「当日、登壇者の写真を撮影することの可否を伺えますでしょうか ・当日、「主催者側が」オーディエンスの写真を撮影される予定はありますでしょうか ・質疑応答の時間はありますでしょうか」と問い合わせたがなしのつぶてである。
「道一つ越えたら崖っぷち」というトークイベントの題材となっている書籍自体が極めて政治性が強い。加えて、仁藤夢乃氏や北原みのり氏といった登壇者らも盛んに政治的発言をしておられることなどからすると、政治的な関心が強い人間がイベントに参加申し込みをすることが予想できるところ、「オーディエンスの容貌」が撮影されないかどうかも大きな関心事である。質疑応答の有無含めて、返信が欲しかった。
なお、参加条件の追加についてのメールだが、以下の文面であり、太字部の文面が酷く誤字になっている。「現在、大変ありがたいことに、たくさんのご応募をいただいております。ただごく少数ではありますが一部、出演者に対する誹謗中傷や攻撃を目的にした参加の予告などが行われている状況です。遊びやゲームのように暴妨害行為を力行為 、厭わない者たちのために、安全な空間が脅かされることは許されません。」
また形式だけでなく内容的にも混乱している。「これまでにColaboや仁藤夢乃さんへの誹謗中傷が確認されている方の入場はお断りします。該当者で返金ご希望の方はお知らせ下さい」という。
これは変な項目であって、「私は誹謗中傷を仁藤夢乃さんにしました」という告白をするーーいわば踏み絵をするかのような行為が返金の条件になっている。これにイエスと答えたら名誉毀損訴訟で不利になるトラップのようである。なおエコーニュースでは仁藤夢乃さんに関して、批判記事は出したが「誹謗中傷」、違法と評価されるような内容を書いた覚えはないため、この条件だと返金要求もできない。
この場合、現地で取材お断りになるのだろうか。また「振り込み手数料はお客様ご負担」というのも酷い。後から来るなと言って、そのコストをお前が払えというのはない。
また参加拒否条件を追加した理由と、お断りの場合が噛み合ってないのも問題だ。すなわち①参加拒否の理由は、「遊びやゲームのように暴妨害行為を力行為、厭わない者たちのために、安全な空間が脅かされることは許されません。」であるのに②参加拒絶対象者は「Colaboや仁藤夢乃さんへの誹謗中傷が確認されている方」である。暴行などの有無ではなく、つまり批判的な表現をしたかどうかが基準になっている。事実上は発言を理由にした、取材対象者の選別である。
なお3月7日に送信されたメールでは誤字脱字が一部、回復しているがTwitterでも指摘があった通り「撮影器機」じゃなくて普通は「機器」と書くように思う。
参加条件についてさらに問題点を付け加えると、「1:受付で写真付きの身分証明書を提示していただきます。ご予約時のお名前と一致しない場合はご入場できません。予約時にご住所の入力がなかった方はご住所を確認させていただく場合があります。」そもそも住所の確認されるのは嫌である。仮に、申し込み時に住所はそのまま書いていたとしても住所と写真付きの身分証は①マイナンバーカード②運転免許証③パスポート④学生証、などに限られると思われる。これらは、住所及び氏名とは別個のプライバシー(例えば生年月日や在学校)を含む個人情報を記載した書類であり、参加条件として付加するのは妥当と思えない。
そもそも、今回のイベントの主催者は北原みのり代表の有限会社アジュマであるが、渦中の仁藤夢乃氏が代表の一般社団法人Colaboはプライバシーポリシーのページがないことで悪名高い。
北原氏のアジュマが出した条件は後出しジャンケンのようにして①まず仁藤氏らの講演会を開催すると言っておいて②さらにくるなら身分証を見せろ、など新たな要求をするものである。これは、一旦取得した個人情報の利用方法として目的外利用(別個の個人情報を要求する。さらにそれに応じる人間か、応じない人間かという情報まで事実上取得する)にあたり違法ではないか。
特に今回は、韓国での売買春産業に関する書籍で、極めて政治的なテーマな上に「身分証を確認」というのがチラッと見るだけなのか、書き写されたりするのかも明らかではなく肝心な部分が不明瞭な案内文だ。
次に「2:スマホを含む録音・撮影器機は預からせていただきます。」という条項も問題である。というのはスマホやタブレットは充電口からウイルスを仕込めたりすることが知られている。今回の講演会・主催者がそういうことをするかどうかの問題ではなく、相手が誰であっても預けたくないものではないか(なおこれはPCに対して、USBを使ってマルウェア感染させる手口はと同じメカニズムである)。
単純に取違防止の措置をどうするかも気になる。定員は100名であるので、満員になった場合には、同じモデルのアイフォンを所有する人やスマホカバーが被る人々すら出てきそうである。そもそも暴力行為の防止と、スマホがどう関係するのか。
そもそもだが契約としては、すでに申込と入金で成立していたと考えるべきである。その条件の一方的な事後的変更はおかしい。(例えば筆者は本名で、2月20日に申し込んで入金も済ませていた)。
また仮にイベント主催者が条件を色々と変更する裁量を持つとしても、それを後で追加するのは景品表示法違反、優良誤認表示になる余地がある。例えば、無条件で、住所を知られず平穏に参加したいとか、スマートフォンはメールチェックのために手放せないという立場の人もいるわけである。
・参照 個人情報保護法(利用目的の特定)
第十七条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
2 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
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【江藤貴紀】