仁藤夢乃氏が2年連続で出したセンセーショナルな題名の著書「難民高校生」と「女子高生の裏社会」・・・これら「著書の出版配布というプロジェクトが、いかに、一般社団法人Colabo(以下、コラボ)の中で活用されたか、あるいはそれが目指されたのか。本の「配布」という戦略と著書の記載内容が未成年らに与えるであろう意味も含めて考える。
これまでの回は資金力と影響力が膨れ上がったことを説明して(第一回)、次にそのスタート地点はフェミニズムと無縁なこととネーミング、ブランディングへの工夫と試行錯誤を扱った(第二回)。そしてこの肩書きは、コラボの組織にとって①メディア経由での宣伝と②「10代の労働力としての確保」という車の両輪の役割を果たす。
(仁藤夢乃著「難民高校生」文庫版(ちくま文庫)の著者紹介ページ)
宗教団体やネットワークビジネスで、無償、低額の労働力を搾取する仕掛けとしてて、団体運営の肝になるのが中心人物のカリスマ性だ。宗教ではよく教祖が書いた(ということになっている場合がほとんどで実際はゴーストライターが作った)本でご利益のあるものを出版してご利益を宣伝する。これをバイブル商法ということがある。
では、極めて政治的な社団法人コラボの場合はどうかというと、草の根レベルでバイブル商法を行なっている。野党支持母体の中でも際立った発言力を持つに至った団体が、組織拡大した過程を仁藤夢乃氏の自著から読み解こう。
(2011年10月22日付、神戸新聞より。「ボランティア態勢が整い手伝うことがなくなったと嘆いていたことを相談」という意見に、仁藤氏の人間感が表れているようだ)
まずは仁藤夢乃名義著書の「運用」方法だ。「女子高生の裏社会」147ページから148ページによると、コラボの仁藤氏は取材した少女に著書の「難民女子高生」を贈るという。最初に「配布」というバイブル商法の基本を忘れないわけだ。そして受け取った女子は学校の図書館にこれを置くようにお願いしたという。仁藤氏がどこまで意図してか知らないが、これは学校職員に対する団体の存在感のアピールでも水際だったやり方である上に、受け取った女子を構成員とするのは、組織固めでも効果的だろう。というのは「学校にかけあって図書館に本を置いてもらう」という方法で、団体運動員としての無償労働を最初から刷り込めるからだ。
この無償労働を依頼されるのが思慮分別の十分ではない未成年ーーしかも人生に迷っていて、「精神的な不安」を抱えていると仁藤氏も著書で述べるような判断力の弱い個人ーーそれに対して「救済者」(著書の中で仁藤は「お姉さん」というが)である仁藤夢乃が教唆するというのは、政治的な意味での未成年や弱者の搾取という面すらあるのではないか。
(コラボ最初のヒット企画である、震災復興を目指した「大福」の販売を行う高校生ら。2011年のこの時点から、コラボはやりがいの代わりに未成年を労働力として確保して、また協力者として喧伝する組織づくりを確保してきた点で一貫している。顔の消しは編集部が行った)
そして少なくとも、「女子高生の裏社会」で147ページから148ページの記述をすることにより、コラボのなかで「本を送って、それを周囲にお薦めさせる」という方法論を広めるという意味を持つ(実質的には政治上のプロパガンダ本を、「救済者」仁藤夢乃と救われる少女という構図をもつのは、今まさに話題の統一教会のフロント団体が統一教会でない世俗のボランティア団体などを偽装するのと構造として相似形だ。「統一2世」ならぬ「コラボ2世」もそのうち問題になるのだろうか)。これはバイブル商法として120点だろう。
(英知出版、2013年発行の「難民高校生」のオリジナルバージョン著者紹介欄)
学校の司書や先生相手には、連載の前回でふれた「一般社団法人」というコラボの肩書きが効いてくると思われる。学校の図書館に本を受け入れてもらうには、政治団体代表でも、宗教団体代表でも会社社長でもいけないのだ。というのは政治家、宗教家であればその主張を喧伝することには抵抗が働いて、会社なら宣伝が疑われる。それに対して「一般社団法人代表理事」は無色透明で色がない。つまり著書の発行とワンセットで、コラボが法人になったということが分かる。
(以前の記事でも引いたコラボの登記簿。設立が平成25年(2013年)3月1日である。)
実際、コラボの成立は2013年3月であり同じ月に「難民高校生」の単行本版が発行されたという、綺麗な足の揃え方をしている。つまり法人作成と同時並行で組織作りに不可欠な要素として書籍出版プロジェクトは進行している。著書は少女のつながり、居場所というご利益をうたって、年に1億8000万を売り上げるコラボにとり必要不可欠の要素だ。次に、地味だが奥付を見ていく。
(Amazonの難民高校生、2016年発行の文庫版・商品紹介。ここだと「加筆」が内容変更としてあげられる。)
はて2013年のプロデューサーでは杉崎真名と原口さとみが、またスタッフとしては原田涼子、高野達成、岩田大志、藤竹賢一郎、山下智也、鈴木美穂、下田理、田中三枝、山見玲加、安村侑希子、山本有子、上村悠也、安達敬、市川志穂、田中大輔(いずれも敬称略)がおられる。ちなみに英治出版の会社概要を見ると「日韓初の合弁出版社 Eiji21 Inc.設立」とあり、またFacebookでは合同合宿も行なっている国際的な企業のようだ。
かなり書籍としては関係者名のクレジットが多い。もちろん編集者はどの書籍にも存在してそれを「プロデューサー」と呼んだり関わった社員を本の裏で紹介するのも(あるいは契約内容や作成・販売の実態によっては、単行本に記載したスタッフを文庫本では省くのも)出版社の自由だ。もちろん関与度合いについては内部者でないので分からない。
つまり難民高校生は、書かれているよりはスタッフが大勢いて「作られた」本であり、コラボトップということになっている仁藤夢乃氏は著者として「プロデュース」される存在だったわけだ(念の為、英字出版は他の書籍でもプロデューサーという肩書きで編集者を呼ぶことがあり、また上に挙げたスタッフは見たかぎりコラボでなく英字出版の関係者である)。
「難民高校生」謝辞では「この本を書く機会をくださった英治出版の原田社長、高野さん」という書き出しで母校関係者では「猪瀬浩平先生」と「活動中の写真やカバー写真を撮影してくれたカメラマン森田友希さん」のほか最後は、「大きなきっかけをくれたコスモの講師やスタッフのみなさん」に、「大切なふるさと農園でいつも「おかえり」と迎えてくれる阿蘇道子さん、白戸睦敏さん、けい子さん。農園で出会った不器用な仲間たち。」や「ハビ☆コレスタッフ」が登場する。また両親と妹の他、「最高の悪友ゆかと、愛するたかちゃん。」らの名前を挙げたあと、故人阿蘇敏文氏への感謝で締めくくられている(この謝辞は文庫版も単行本版も、今のところ同じ)。
次に仁藤夢乃氏の2冊目の著書「高校生の裏社会」を見てみよう。ここでは出版にあたって「光文社新書へつないでくださった」方として仁藤氏の母校、明治学院大学の「石原俊先生」(同大学社会学部の教授である)が挙げられ、光文社のスタッフとしては山川江美氏、小松現氏、廣瀬雄規氏が挙げられている。
確かに、母校の恩師やスタッフにーー形としてもーー謝辞をきちんと述べるあたりは仁藤氏の育ちの良さというか、「人たらし」さ(この点についてはシリーズで後に触れる)が出ている。が、私が関係者名を挙げて何を言いたいかというと、著書の記載内容ーー事実関係ーーについて「普通の出版社ではツッコミを入れるのではないか」という箇所があるからだ。
この写真では秋葉原のJKビジネスの様子について「女子高生」と断定しているが本当に高校生なのか、とっくに学校を卒業していたりする可能性は、取材の上で潰したのかという疑念が残る。(過去の記者会見では、同じ写真に関して被写体の年齢を確認しているかという質問に対して仁藤氏ははぐらかして、問いに答えない回答しかしていない)
時に仁藤氏に対する悪口として、「裏にいる左翼の仲間が糸を引いているのだろう」的な書き込みがSNSなどの上で見かけられたが、「後ろにちゃんと関係した人間がいる」、そして事実関係の怪しい資料が書籍に使われているという限りにおいて、悪口は陰謀論ではなく根拠ある事実だ(もし被写体の年齢確認を行なっておらず、「女子高生も40パーセントの割合でいると推定される」、というような場合には何らかの留保をつけるべきである)。長くなったがそういう経緯があるため、文責を明らかにする意味でこの記事ではーー法人なりからわずか10年足らずで野党の有力支持母体となった代表の著書に関してーー関係者が誰かを明らかにしたわけである。ちなみに「女子高生の裏社会」(2014年初版)は改訂版が出た旨のアナウンスはないものの、2018年6月付の付記がつけられていて、例えば2020年8月15日刷の5刷のバージョンでは、本の末尾で6ページ分、加筆がされている
最後に、難民高校生の出版はコラボのマーケティング上、急がないといけない事情があった旨を述べておく。それは「難民高校生」の「はじめに」8ページで「私は今、大学生という立場でこの本を書きたいと思った。」という冒頭に集約される。(第4回に続く)。
【2022年9月9日追記】石原俊明治学院大教授のTwitterアカウントが仁藤氏に言及していたツイート経由で、図書新聞の魚拓を追ったところ、仁藤氏と石原氏の対談があり「仁藤さんは二作目の『女子高生の裏社会』(光文社新書、二〇一四年)で「JK産業」に巻き込まれた女の子たちの性被害を描き、作家としてもアクティビストとしてもさらに有名になりますが、ここで少し裏話をすると、実は本紙編集長のおつれあいのYさんが光文社の編集者で、また私の友人でもあり、Yさんを通して新書の企画を持ち込んだという経緯があります(笑)。」とのいきさつがひもとかれていた。
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【江藤貴紀】