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一般社団法人コラボの分析(21)軽度知的障害者らの支援と、政治動員という倫理的ジレンマ

2022年9月23日18時53分
カテゴリ:国内

一般社団法人コラボの分析(21)軽度知的障害者らの支援と、政治動員という倫理的ジレンマ

一般社団法人Colabo(以下、コラボ)の活動は2020年以降、特に国会でも頻繁に取り上げられている。以下は、「colabo」で国会の議事録検索をした際の年度別ヒット数とその発言者、内容を簡単にまとめたものである。





全体的な傾向としては①2020年以降にコラボについての言及が極めて多くなる。また②選挙の近い議員がよくコラボの名前を口に出している感じはある。意地悪な見方をすると国会質問で支援団体に目配せすることで、選挙での支援へ秋波を送っている面もあるかもしれない(地方議会の場合、この傾向がより露骨になる)。


ただ以上の発言傾向は、あくまで一応のものと捉えていただきたい。というのは国会の開かれていたタイミングに偏りがある(一時期批判されていたように与党がなかなか臨時国会を開かないなどしていた)し、また会派や党内、委員会の中でも選挙の近い議員になるべく発言機会を与えるような現職同士の互助メカニズムが働く余地があるからである。


この支持団体への現職議員の言及傾向は、いかにも近年の政治学が分析対象にしていそうなイシューだが、ここでは本題でないので深入りしない。


今回、焦点を当てたいのは以下の藤野議員の国会発言にも見られた知的障害者、精神障害者の支援に伴う問題だ。



(仁藤夢乃氏からの伝聞として、ある時期にはバスカフェ利用者の大半が知的障害または精神障害を持っていたという、共産党藤野代議士(当時)の国会発言)


知的障害者が支援対象になることが多いという点は、papsという団体のメールマガジンバックナンバーでも確認できる。これによれば、仁藤夢乃氏は「街中で見られる、性産業に巻き込まれている軽度知的障害の女性の実態」という講演を2016年に行なっている。



(papsより)


ここでもう一つ、仁藤夢乃氏の寄稿記事を見てみよう。イミダス連載の「辺野古ゲート前でゴボウ抜きされる」と題された回によればコラボが支援した対象は沖縄での米軍基地工事に反対する活動へ参加したという。


未成年に政治教育を行うのは「洗脳」スレスレな気もするが、100歩譲って、まあキリスト教や仏教など宗教系の学校や、保守寄りないし革新よりの学校もあることだし、よしとしよう。また、精神障害者、知的障害者についても政治活動の自由や選挙権、被選挙権は保障されるべきだ(少なくとも、そうでないというのは相当に勇気がいる立場だろう(注1*))。


しかし、「知的障害者や精神障害者が人口全体のサンプルより高確率で含まれている10代をはじめとする被支援者を、搾取から守るという建前で引き寄せ、政治教育を施して自身たちと同じ主義主張を持たせ、派手に大立ち回りをさせる」だとどうだろうか?


すなわち、仁藤氏は2014年出版の「女子高生の裏社会」以来、福祉は裏社会のスカウトに負けていて、スカウトたちが若年者の女子を食い物にしているーーなので表社会の側にいる我々が、裏社会に負けずに居場所を失った若年女子をリクルートしなければいけないという。このように、道に迷っている青少年女子へアプローチする対象を①裏社会か②コラボに代表される表社会か、に分ける極端な2分論を彼女は用いる。



(女子高生の裏社会より)


そして、仁藤氏の議論は強すぎる前提を置いているように見える。それは「裏社会じゃなくて(仁藤氏を含む)福祉活動家であれば、搾取もしないし、また正しい生き方を知っている(場合によっては支持するべき政党も知っている)というものだ。


例えば沖縄の基地問題はデリケートで難しい。よりによって、その賛否の大きく分かれる問題で、しかも是非を自信をもって判断するには(あるいは判断を保留するという結論を下すにも)、知識も思考力も必要になる話に関して、自分の庇護下に置いた、未成年で知的に問題があったりあるいは精神障害のある者を動員するとしたら、性搾取よりひどく他人を道具として扱っていないだろうか。



(辺野古基地移設反対運動に、コラボで支援する対象者を連れて行った旨の仁藤夢乃氏の2019年8月29日付Facebook投稿より。沖縄を訪問した女子らの軽度知的障害や精神障害の有無は不明。)


なお仁藤夢乃氏の2015年3月27日付IZA!あて寄稿によれば、仁藤氏は同年1月に「在日アメリカ大使館で米国務省の調査に応じました」とある。つまり米国大使館につてはあるのだから、基地まで行くよりもコラボのある東京で、また少女を連れていくのではなく自分の口でそのままアメリカ大使館員に対して基地のことを抗議してくれればいいじゃないか、という気もしてくる。


ただ、「精神障害者や知的障害者という属性が加わった場合には、その人への政治的な関わり方を変更すべきか」というのはギリギリのそれこそ答えの出ない議論である。しかも支援・被支援という関係には優位性と劣位性という非対称な、一方がある種の権力を握ってもう一方を庇護してあげるという構造が伴う。


このような場合に政治的な働きかけ、特に基地問題など意見の分かれる内容について支援者らが自らの思想信条に応じた教育を施すことには、極めて難しい倫理的な問題が生じる。そもそも①年齢②知能の高さ③精神障害の有無、などの事情に応じて、政治的な働きかけ方を変更するべきかはたまたそうでないのか自体が、倫理上答えの出しにくい大問題である。場合によっては、区別をすること自体が差別という見方も十分に成り立つ。


しかし一つ言えるのは、コラボの活動、少なくともそれを伝える関係者の文章にはその「迷い」が見られないということだ。また「知的障害があるから守ってあげるべき」、「未成年であるから守ってあげるべき」という種類のコラボが好きな議論は、知的障害があろうがなかろうが、また年齢が若くても、政治動員を行うというような立場とは極めて相性が悪い。


コラボの政治動員に対して、少なからぬ人が問題視しているのは(その支持対象が特定政党であったりするという理由だけでなく)、この判断力の弱い対象を動員しているのではないか、という手続面での不正義の可能性が感じ取られているからではないだろうか。


なお論理的には、①コラボの保護する対象は知的障害、精神障害を抱える少女も多いものの②政治的に教化したり、政治動員する対象は障害のない被支援者に限定しているという可能性もあるが、今まで筆者が知る限り、その旨の言明をコラボが行ったことはない。


注1:ただし一定の理性は政治参加の前提として必要とみる考えもある。例えば、参政権の拡充に極めて前向きであったイギリスのJ.S.ミルでも(19世紀にであるが)読み書きができる程度の知的能力は有権者の資格に必要としていた。


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【江藤貴紀】


 

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