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高市早苗議員、政治団体からHP関係費などで奈良新聞グループへ129万円超を支出ーー地方紙、経営と報道の利益相反問題

2022年8月12日18時37分

高市早苗議員、政治団体からHP関係費などで奈良新聞グループへ129万円超を支出ーー地方紙、経営と報道の利益相反問題

第2次岸田内閣で経済安全保障担当大臣に任命された高市早苗衆議院議員(奈良2区選出)が、地元選挙区で地方紙を発行する奈良新聞社およびその系列の奈良新聞コミュニケーションズ社に、ホームページ保守と改修、サーバー使用料として、平成30年から令和2年の3年間に90万円超を支出していることが政治資金収支報告書の記載から分かった。また後述の通りその他の支出を含めると奈良新聞グループへの支払額は129万9200円にのぼっており、報道機関と政治家の緊張関係に疑問符が付く。


まず、ホームページ作成と管理業を営む奈良新聞社コミュニケーションズは奈良新聞社と同一住所の奈良市法華寺町2−4に所在。ウェブ上で対外的には「奈良新聞WEB制作部」と同社の一部門のように名乗っている。

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またURLこそ奈良新聞は https://www.nara-np.co.jp 奈良新聞コミュニケーションズは https://www.nara-np.co.jp/ と異なっているが容易にページは偏移することが出来る。このため別法人であるものの、実質的に一心同体に近い。そのため以下では奈良新聞グループとする。


高市早苗議員の政治団体から奈良新聞グループに対する支出の内訳は2020年(令和2年)がサーバー利用料で26万4000円とホームページ改修作業費15万4000円で、特に後者は奈良新聞社へ直接支出。2019年が「サーバー使用料」、2018年が「ホームページ保守料」名目でいずれも年間259200円ずつを支払っていた。なおこの3年間のいずれも別途、三井住友トラスト・パナソニックファイナンス社へも「ホームページ保守料」を支払っていて、更新頻度やページ制作の技術的負担がさほど重くないことからすれば、奈良新聞グループにとっては上客である。



(高市早苗氏が代表の政治団体、新時代政策研究会が総務省に提出した令和2年分の政治資金収支報告書より)


高市氏は有名人とはいっても政治家のサイトでアクセス数と負荷の程度はたかが知れている。ホームページ作成料金込みのプランとしても、保守について三井住友系の別会社へも委託していることからすれば、サーバー料金が年間20万円超は割高である。

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(令和元年分の政治資金収支報告書より)

仮に個人情報その他のデータについて守秘の必要があったとしても、そもそも高市早苗氏は(ホームページのものかは不明であるが)リコーリースに「データベースサーバ・端末リース代」名目で年間100万円超を支出している。それに加えて毎年、奈良新聞グループに月2万円を超えるサーバー利用料を使っているのは、甘くいっても放漫経営、悪く言えば払い過ぎで地元紙との「馴れ合い」状態にあると言える。


さて以上の支出はそれ自体で(度が過ぎると違法な寄付になりうる点はおいておき)、違法ではない。しかし問題は選挙区の所在する奈良県でウェブあるいは紙媒体において大きいシェアを持つ地方紙と、その選出議員が経済的取引関係を持つことと報道倫理の関係である。

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(平成30年分の政治資金収支報告書より)

奈良新聞は、同社HPによると日刊95000部を発行。広告代理店の案内によれば読売毎日朝日と競り合う部数を発行しており、県内で3位のシェアを持つ。


また地方紙の特性として、全国紙に比べて地元関連の取材に強みがあり、また紙面も多く割くことが可能という面も考えると、奈良新聞は奈良県内で最も重要な紙媒体ということもできる。


両者の利害関係に目を向けると、高市氏から見ればその発行企業に仕事をふることで、手心を加えてもらえるのではないかと当然に期待できる。一方で奈良新聞は、高市氏を地元選出の国会議員として自社の取材対象としている。加えて①高市氏②高市氏の政敵③高市氏と有効的な関係にある議員や首長などを取材、論評する立場である。にもかかわらず、特に高市早苗氏と高値でのHP関係契約を結んでいることは、地方における政治報道の公平性、妥当性に疑問を持たせる不健全な状態である。特に奈良新聞と高市氏の政敵や有権者との関係やでいえば、利益相反状況である。かかる報道の機能不全が疑われる状況は、民主主義国家において決して好ましくない。


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(サーバー大手、「さくらレンタルサーバー」のプラン案内より。Webページ制作料込みではないため単純比較はできないものの国会議員のウェブサイト程度であれば月額980円からせいぜい2000円程度で足りると考えられる。高市氏のサイトは比較的昔からのテキストを「コラム」として、また近年の記念写真も「アルバム」としてまめにアップしているが、ファイルサイズはいずれも大きくない。)


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(奈良新聞グループの2019年時点でのHP関連料金の案内。ちなみにこのタイプの初期費用0円は資金力のない零細企業などが利用することが多いが、長い目で見るとかなり割高になる。そのため政治資金の潤沢な高市氏の政治団体が利用する必然性には乏しい。)


【2022年8月12日22時58分アップデート】高市早苗氏が同じく代表の自由民主党奈良県第1選挙区支部からも、奈良新聞に対して「年会費」名目で6万円の支払いがなされていることが分かった。この「年会費」の性質については、いったい代議士が新聞社の何の「年会費」を支払っているのかなど疑問があるため、現在確認中である。

加えて「奈良県著名人年鑑」への記載料としても、同自民支部は2020年と2019年に66000円ずつ、2018年には64800円を支出(ただしこの著名人名鑑への支出は、奈良県選出の他の国会議員にも見られた)で合計194800円を支払っていた。特に2018年は、奈良新聞と同一住所で営業していた奈良日日新聞へも広告掲載料として10万8000円を支出。奈良日日新聞社は翌年の2019年に奈良新聞社と統合して広告代理店部門となったため現在は奈良新聞グループである。

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(国会議員のサーバー料金の例として、山際大志郎大臣が代表の自民党支部政治資金収支報告書より。一般的な業者に依頼すれば大臣クラスので政治家でもサーバー代金は年間2万円未満である。)


従って奈良新聞グループ(奈良日日新聞を含む)が収受した金額は2018〜2020年の間にホームページ関係費で93万6400円、その他の「年会費」や「奈良県著名人年鑑」、また広告掲載料を入れると合計で129万9200円になった。

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【2022年8月14日9時42分アップデート】公益財団法人政治資金センターがアップロードしている過去の政治資金収支報告書を確認するとホームページ関係業務は2016年までは三井住友系の別会社のみが請け負っていて、2017年の途中から奈良新聞グループが参入している。しかし三井住友系への業務委託は2018以降も従来とほぼ同額で継続しており、奈良新聞グループと二重にホームページ関係費を支払っている状態である。必要性の薄そうなホームページ関係業務の二重支払いで、選挙区の地方紙グループが国会議員へお金を撒くのはあまり健全な政治資金の使い方とは思われない。


なおこのサーバー料の指摘は本紙に先んじて、ツイッターユーザーの「電脳藻屑」( @Nou-YunYun )氏が2021年11月27日に行なっていたことが判明した。


以下、資料として高市早苗氏代表の政治資金管理団体「新時代政策研究会」の政治資金収支報告書のリンクを添付する。(いずれもウェブアーカイブに保存したので、アーカイブにURLを打ち込めば総務省と奈良県のファイルがリンク切れになっていても、閲覧可能)

2018年(平成30年)分

2019年(令和元年・平成31年)分

2020年(令和2年)分


追加資料として、高市早苗氏代表の自民党支部「自由民主党奈良県第1選挙区支部」の政治資金収支報告書の奈良県選挙管理委員会に提出されたもののリンクを添付する。

2020年(令和2年)分

2019年(令和1年・平成31年)分

2018年(平成30年)分


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