一般社団法人Colabo(以下、コラボ)は現在、バスカフェ事業などの違法経理を指摘されて住民監査が実施されているところ、その後押しには何があったのか。今回と次回は地方議会の議事録を参照して、地方議員らの発言(質問)内容とその所属政党、発言した時期などから、コラボと政治の関係を読み解いていく。長くなるが、以下の2つの表を見てほしい。上は東京都および新宿区、渋谷区の会議録を”Colabo”で検索した結果を筆者がまとめたもので、下はそれ以外の議会について「地方議会議事録横断検索」というbitlet社が提供しているサービスを用いて、やはり”Colabo”で検索したものである(注:1)。
まず質問者の所属政党については2018年までとそれ以降で、明白に傾向の変遷が見られる。すなわち2018年までは、コラボに関する質問件数は18件でそのうち共産党は3件のみであった(残りは自民4、生活者ネットワーク(という東京の政治団体。方向性は革新より)3、都民ファースト2などである)。どの質問も基本的にコラボへ好意的な内容で、つまり2018年まではコラボはどこの政党とも仲良く「全方位外交」を取っていたーーそしてその政治的影響力を確保したーーと考えられる。それにしても、絶対的な議席数で自民の方が共産よりも多いとはいえ、2018年まではコラボを持ち上げている質問が共産党より自民党の議員からよく出ていた、というのはなんとも意外である。
しかし2020年以降は傾向が一変して、「共産党案件」としてほぼ共産党が強くプッシュする発言ばかりで質問が占められることになる(なお2019年にはなぜか質問が1つも発見できなかった)。すなわち全てで議会の議事録でヒットする件数は15件で、発言者の所属政党は共産党14、立憲民主党1であった(なお共産党14のうち、2回はいずれも2名の議員がコラボに言及して強く後押しをしている)。これは、仁藤夢乃代表の「赤旗」登場率が近年右肩上がりなのと、軌を一にする(仁藤氏の年度別、メディア出演内訳と赤旗登場率については連載第3回リンク参照)。
つまり①2018年までの地方議会での質問のうち、共産党議員によるものは18件中3件、つまり16.6パーセントに過ぎなかったにも関わらず、②なぜか2020年以降は15件中14件、93.4パーセントの質問が共産党議員によってなされた、というふうに明確にコラボと共産党が接近している。
共産党はジェンダー平等掲げておきながら、衆議院選で東京の比例の順位を男男女とし、性搾取の問題に他のどの候補者よりも取り組んできた池内さおりさんが2回連続比例3位で落選。池内さんを国会に送ろうとした女たちの汗と涙の票に押し上げられて当選した男性議員までこの法案に賛成してるの許せない。 https://t.co/ZgVxIKovDi
— 仁藤夢乃 Yumeno Nito (@colabo_yumeno) May 25, 2022
仁藤夢乃氏はこのように共産党を(サポーターとして身内から?)批判しているものの、少なくとも翌月の2022年6月にはそれまでと変わらず共産党所属議員から新宿区議会防災対策特別委員会で、コラボを支援する発言がなされている。ただ6月の質問内容は仁藤夢乃氏の5月25日ツイート時点でもう決まっていた「確定稿」でそれを言っただけという可能性もあり、9月にも引き続き共産党への不満を仁藤夢乃氏は述べているため、上位下達体制で内部統制の厳しい共産党で仁藤夢乃氏およびコラボが今後どういう扱いになるかはまだ分からない。
なお共産党の赤旗記事を検索したところ「仁藤夢乃」のヒットは最新のものが2022年5月11日付記事である(注2:)。仁藤夢乃氏がコラボを法人として立ち上げたのが2013年3月で、今までの活動歴はざっと9年と9ヶ月、つまり月数にして117ヶ月である。ウェブ版の赤旗がこれまで40回、仁藤氏を登場させたとなると理屈の上では3ヶ月に一回の頻度であるから、最後の登場から6ヶ月間隔が空いているというのはやや長いーーーコラボと共産党の距離感を示唆しているかもしれない。
また議員の発言内容で特記するべき点として、コラボを「NPO」や甚だしい場合は「NPO法人」としている議員も散見された。他ならぬバスカフェを行っている渋谷区、新宿区の議員でこのレベルの間違いがいたのは嘆かわしいが、裏を返せば一般の印象としてはコラボ=NPO的なボランティアをするところ、というふんわりとしたイメージが共通了解になっていることを物語る(当たり前だが地方議員が大勢、誤解していたわけだから、①任意団体の法人格を持たない「NPO」②「NPO法人」③「一般社団法人」のそれぞれを区別をできている人間は、国民全体の中では極めて少数、おそらく10パーセントあるか怪しいと思われる。所管課の公務員が誤解している例もあった。(注3:))
発言時期に着目すると初の地方議会での質問が、コラボの拠点である東京都ではなく北九州市議会で行われていたことも興味深い。いうまでもなく、北九州市は2015年からコラボ理事である奥田知志氏(シールズ代表であった奥田愛基氏の父)の活動拠点である。彼は北九州市でNPO法人ほうぼくという団体の代表を務めているが、この団体もコラボと同じようなところから、助成金収入を多く得ていることは連載第7回でも述べたとおりである。この「ほうぼく」は極めて資金力の豊富なNPO法人で、例えば直近年度の活動計算書によると経常収入(雑に説明すると、売上)額は7億8200万円である。連載1回で扱ったコラボの集金力と比較しても3倍近い「売り上げ」だ。
(「ほうぼく」活動計算書リンクより。)
ここからコラボスタートアップ時の原動力として、福祉活動業界の「大物」である奥田氏の政治的影響力やコネクションが、大きな手助けになっていた可能性を示唆される。北九州市議会での議員質問も実際、長々と仁藤夢乃氏の活動を喧伝するものであった。
(北九州市議会会議録リンクより)
まとめ上げると、①コラボの立ち上げから2018年までは全方位外交で歩んできたのが、②なぜか2020年以降は共産党と接近して蜜月の時期を送っていたものの、③2022年5月以降の距離感がどうなったのかはよく分からない、となる。
(国会議事録の場合。やはりこちらでも、共産党議員による言及が近年特に増えている。今年5月以降は誰からもコラボに対して言及がないものの、国会の議事録は地方議会全部、と比較すると扱えるマターの数に限りがあるため、ここから仁藤氏と共産党が喧嘩別れした、などといった結論はすぐには導けない。)
次回は東京都、新宿区、渋谷区の議会議事録の内容に立ち入って分析し、コラボに地方議員がどんな「恩寵」を提供して、またその見返り(があるとすれば)は何だったのかをかい語録中の質問と応答内容に踏み込んで見てみたい。
*注1:bitlet社のサービスは(失礼ながら)完全ではなく、検索結果に抜けが生じている(例えば東京都、新宿区、新宿区の議事録はbitletのサービスではヒットしなかった。なので抜けの割合は相当に大きい可能性がある)。これは、自治体ごとに会議録を公開しているシステムに相違があって、それらを網羅的にクロールするのが難しいことに由来する。この問題点についてはすでに研究者から指摘があり、「全地方議会会議録の横断検索に向けたデータ収集とデータ構造の検討」という論文の抄録でも「全国には都道府県・市・特別区・町・村を合わせて,1788の地方自治体が存在しており,このうち約86%がウェブ上で地方議会会議録を公開している。しかしながら,ウェブ上での会議録の公開方法やデータ形式は自治体により異なっており,横断検索や集計などにおいてそれらを統一的に扱うのは難しい。」旨が指摘されている。
もうちょっと人力で頑張れば、さらに他の自治体の議事録も発見できると考えられる。だが、①あくまで全体の傾向を見るという目的からは、たまたまbitlet社の検索システムと相性が良かったものの抽出サンプルを使っても、所与の目的はある程度達成できること②またコラボがバスカフェ事業などを行い、直接的に資金または土地の無料使用などの恩恵を受けている対象としては東京都、新宿区、渋谷区の3自治体に限られているところ、現時点ではこの3自治体についてもれなく精査すれば、どのように、地方政治家と行政の力関係から現在の特権的な各種の扱いという「成果物」を得たかは知悉できること、の2点から人力による検索は以上の3自治体に限って記事とすることにした。
*注2:コラボは新聞報道などで(主に2012年以前に)「NPO」と呼ばれることがあったが、これは(法人格を伴わないただの「NPO」ならば自称するだけでOKだからであり、コラボがNPO法人の法人格を有していたことは全く意味しない。実際、登記簿を調査しても「Colabo」の名称で仁藤夢乃氏らが設立したことがあるのは、「一般社団法人」のみで、「NPO法人Colabo」は存在したことがない。しかし、日本財団などの助成金を支出する団体のデータベースでも誤って「NPO法人」となっている場合があり、読者としては区別に注意されたい(本連載の記事としては第2回(リンクはここ)が、コラボがNPO法人でなく一般社団法人を選択している理由について、なるべく詳らかに扱っている。。
注3:赤旗で「仁藤夢乃」の検索をしたところ件数は全部で40件とでたが、実際に表示されたのは20件未満であった。理由はよく分からない。なお「Colabo」での検索でも全く結果は同様である。また時系列順に記事が出てくるわけでもなく、赤旗の記事検索は使い勝手の悪さが目についた(なおこの記事検索はGoogleの検索エンジンでサイト内を検索する仕組みになっているところ、基本的に反米路線の強い共産党の機関誌検索が、米国企業の筆頭であるGoogleで良いのかという素朴な感想も浮かんだ。確かに国内企業のサービスでグーグル並み使い勝手が良いものはなく、シェア的にはまあまあ大きい(Yahoo! JAPANもGoogleの検索エンジンに「乗って」いる、つまり実質的にはGoogle検索であることはよく知られている。しかし団体内部の機関誌検索システムぐらいは、一定の議席と資金力のある国政政党なのだから自前で発注して作らないのだろうか。)
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【江藤貴紀】