(削除済みの仁藤夢乃氏アメーバブログリンクより。)
一般社団法人Colabo(以下、コラボ)の特徴は、その取材のしにくさにある。団体規模と影響力の割に代表の仁藤夢乃氏以外の露出が極めて少ない。また仁藤氏も頻繁にブログの全記事を削除するなどして(アメブロとLINEブログ、いずれも全て削除済み)、繋がりのある政治家や関係者、スポンサーなどが秘匿されている(連載の4回と5回を特に参照されたい)。
今回は、「実践倫理宏正会」(安倍晋三氏を襲撃した山上徹也氏の母が、統一教会の以前に信仰していた事実上の宗教団体)が発行していた機関誌「倫理宏正」の1974年12月号を参照して、紙媒体を発行することで何がすぐに見えてくるか(逆を言えばコラボが紙の証拠を残さないことで、何を見せないでいるか)を検証したい。なお今回の記事は、統一教会特集の人脈、特に石川県の北國新聞および北國放送社についての基本的な事実確認の意味も持つ。
まず「倫理宏正」は、社団法人実践倫理宏正会の出版する雑誌であり、その価格は1974年当時で60円(送料は20円)であるところ、この1974年12月号は創始者上廣哲彦の「三周忌」の日本武道館集会と各地での集会を特集している(都立の図書館では、紙質の劣化などを理由にコピー不可だったため以下、文字のみでお伝えする)。
表紙と裏表紙は鮮やかなカラーである。そして10月6日に行われた武道館集会では12000人を動員したとあり、フォトグラフとしてこの武道館集会を中心とした写真が、モノクロではあるが極めて完成度の高いーー会員の士気高揚という成果を十分にあげたと思われる程度に優れた迫力でーー掲載されている。武道館の集いに参列したのは大蔵官僚を経て参議院議員にこの年当選したばかりの鳩山威一郎を含めて、国会議員が13名である。特に衆議院議員議長や防衛庁長官の経験のあった船田中(船田元の祖父である)と灘尾弘吉(文部大臣、厚生大臣などを既に経験)からの挨拶については、その要旨に1ページずつが割かれて掲載されており、実践倫理宏正会との繋がりの強さが強調されている。祝電は当時の内閣総理大臣、田中角栄ほかが送っていたとしてその文面とともに紹介されており、団体としての権威づけに余念がない。
これに対してコラボはどうかというと、例えば仁藤氏のブログ https://ameblo.jp/colabo-yumeno/ は現在削除されていて、検索エンジンにはすぐに引っかからない。もっとも魚拓を使うと「2民主党共生本部にてお話&意見交換」で、「岡田代表、長妻さん、蓮舫さん、小川淳也さん、たじま要さん、石橋道宏さん、大塚耕平さん、斎藤嘉隆さん、石毛えい子さんなどにご参加いただきました。」といつどの政治家と接点があったのか分かる。「2週刊読書人・恩師と対談」で、石原俊・明治学院大学教授との関係が分かったりであるとかする。ただ、一般にはわざわざ魚拓など見ないーーー日本全体の人口でいうと、魚拓の存在も知らない人が半数を超えているかもしれないーーーし検索エンジンのクローラーもやがては記事内容を拾わなくなって、ヒットもしなくなる。
「倫理宏正」に戻るとそのほか、武道館集会への参列者としては財界人や学識関係者も上げられており富士銀行頭取佐々木邦彦、北陸放送社長嵯峨逸平、立正女子大学学長(注:現在は文教大学である。)の学長小尾 乕雄(おび とらおと読む)や国立科学博物館館長の福田茂のほか読売巨人軍監督の川上哲治に、北國新聞社社長の宮下与吉などが確認できる。
この宮下与吉はP28から始まる寄稿で、実践倫理宏正会創始者の上廣哲彦との昭和29年の出会いを回顧して、当時自分は北國新聞社の専務であったころ、上廣哲彦が北國新聞社へ、同会への祝辞の挨拶を依頼したい旨で訪れたこと、それを受けて当時の北國新聞社長であった嵯峨逸平が嵯峨逸平を宮下に紹介して以降、知遇を得たこと、また今では宮下も実践倫理宏正会会員であることなどが述べられている。
次に国立科学博物館長の福田も、巻中に「聖職論争」として5ページを割いて、もっぱら日教組内の主流派と反主流派の動向を、批判的に紹介する目的の人物A、Bの対談形式でも記しており、そのストライキが国民にとって迷惑であることや、反主流派はその支持母体である日本共産党の機関紙の論調と歩みを合わせていること、また主流派が今回も日教組の大会において優位を保ち、おそらくはその路線に沿って1974年秋から1975年の春にかけてストライキを大規模に行うであろう旨を、軽妙な筆致で読者に紹介して政治的に教化している。
そのほかも実践倫理宏正会の各地支部からの寄稿として日々の信仰活動(この言い方をあえてする)が取り上げられて、会員の同志に周知させるべき見本の例として、また寄稿した者ら自身の信仰活動を鼓舞する目的で掲載されている。例えば「心理向上のだいご味は班活動で」と題された「城南支部」の岩瀬某氏(巻中では当然に実名)による投稿、「朝起き小学生ひと夏の尊い実践」「ひと朝ごとに喜びがふくらむのです。」など、全体的に言うことは見えていても、純粋に文章の構成水準でいえば一般の新聞投書より洗練されたものがこの号に掲載されている。語感や文字づかいはどことなく「相田みつを」風である(なお実践倫理宏正会とは分派的な関係にある倫理法人会のモーニングセミナーでは、実際頻繁に相田みつをが取り上げられるそうである)。
それに対してコラボでは、仁藤が師事した阿蘇氏がプロテスタントであったことや、やはりプロテスタントである奥田知志氏が理事職にあることなどは分かるものの宗教的なスタンスは明確でない。支援対象の少女らのプライバシー保護や二次被害防止などがコラボの言い分であるが、国会議員や著名なNPO関係者との公にして一度は広報していたこと会合や、大学教授とのトークイベント開催などは別に秘匿する対象では普通ないはずである(ちなみに仁藤夢乃氏も相田みつをを好きであった旨は書き記していた。*別に彼女と実践倫理宏正会と関係があると言いたいわけではない)。
以上から例えばであるが、実践倫理宏正会はその発祥の地である石川県において地元紙とテレビの北國新聞、北國放送グループとのコネクションを活かして広がりを見せたことなどが把握できるわけだが、コラボの場合はそれがない。それもあって、どういう縁でどういうグループにコラボと友好的な関係が広まったか、あるいは今はそうでないのかなどが、第三者にはとても把握しにくくなっている。この秘密主義的なコラボの広報戦略は、あくまでも有権者が政党及び候補者とその支援組織について一定の知識を得ていることを前提として投票行動が行われるという、民主主義社会の像とは相性が極めて悪い。
(2015年02月16日(月)付の「【必読!】児童養護施設での性虐待、家出、売春について『「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす』を読んで」というアメブロ投稿魚拓にある、献本された書籍に仁藤氏が付箋をつけたり書き込みなどをしていた箇所。著者の1人である矢満田篤二さんの「活動については、私は心から応援したい」としつつ「ただ、この本を紹介するにあたっては、P160~162の2ページの誤りについて述べる必要が絶対にあります」とされ、以下の続く文中ではいかに矢満田氏の認識が誤っているかが激しく論難されている。)
実践倫理の裏表紙には、佐々木頭取が三周忌に出席していた富士銀行と、協和銀行(現在の国会内に支店をなぜか持つことで知られる、りそな銀行の前身の一つ)が上下それぞれに半分ずつ広告を出しており、財界のどの部分がスポンサーとなったかも見えてくるわけである(この点も、本連載で初めて、警察官僚が多数天下って役員となったパチンコ業界の団体という意外なスポンサーが発覚したコラボとは対照的)。
最後に、紙で内部向け資料を発行した場合にはその団体の支部の所在およびその代表者名や電話番号などが掲載されることが多い。実際、倫理宏正」にも支部の情報は事細かに掲載されている(この内部文書の精査は古い世代では溝口敦氏ほかの創価学会ルポタージュであったり、また近年に至っても統一教会や日本会議など事実上の政治勢力を研究していた報道に大きな取り掛かりを与えてくれるものであった)。すなわち海外支部ではハワイとロサンゼルスがあり、日本国内では例えば奈良県内なら支部が2つ。一つは「吉野分所」であり住所は奈良県吉野郡吉野町の橋屋XXX(吉野製材工業協同組合事務所内)で、電話番号がYYYY、代表者がZZZであり、もう一方は大和高田市片塩町三十三の15で竜王宮(奈良県のウェブサイトにも掲載されている、メジャーそうな神社であるので住所はそのまま記す)であり、こちらも代表者名と電話番号が分かる。
このような情報から、実践倫理宏正会はエスタブリッシュメント層に支持を広げながら、神道や仏教との「相乗り」を厭わずに普及していったというふうな沿革が分かる。また場合によると山上徹也氏の母親の、統一教会と接点を持つ以前の姿も、かつて「信仰」していたという実践倫理宏正会の支部を当たれば見えてくるかもしれない。
それに対して、害のなさそうな海外旅行記事まで含めてブログを「全部消す」ということで仁藤夢乃は、「自分が過去の何を把握されたくないかを、追求しようとする試み」を塞ごうとしているように見える。すると例えばだが特定機密保護法に対して批判的だったとしても(実際そうであった)、将来にはその法案をより強力にしようと強化する政治勢力や政党を支持することがあり得る。つまり過去を白紙に戻す政治勢力は、その将来もブランクであるということだ。例えばーー小池百合子氏が再び「希望の党」のような政党を立ち上げた場合にーー、その支援勢力として馳せ参じる可能性も全く否定できないわけである。
「社団法人実践倫理宏正会」と「一般社団法人Colabo」、宗旨も規模も異なれば、昭和と令和で時代は違うものの、いずれも政治への志向が強い団体でありながらここまで後者の方が秘密主義が実践されているというのは記憶されてよい。ある団体の過去の状況の方が、別の団体の現在よりも把握しやすいというのはとても不思議な感じである(連載は続きます)。
(2015年にフィリピンのリゾートで旧友と親交を温めた旨を書いたLINEブログの記事より。顔写真の消しはエコーニュース編集部で入れたもの(仁藤氏は消さずにアップしていた)。ラム酒を2本空けたなどともある。どれくらいの人数でかは知らないが、仁藤氏はかなり酒好きである。なお同じページにはネパールで食べたダルバート(直訳すると「定食」)が美味しかった旨など書かれている。)
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【江藤貴紀】