カタリバというNPOがある。コラボの理事である稲葉がかつてナンバー3を務めていたNPOである。英治出版というブランディング出版(というのは同社の表現)を手掛ける出版社が出す「「カタリバ」という授業」という書がある。出版は2010年。この本の裏表紙にも顔を出す稲葉隆久とカタリバの影響という観点から今回はコラボの特徴を考える。
(「カタリバ」という授業、裏表紙より。いちばん右が稲葉隆久氏。)
カタリバの活動開始は2001年、法人化は2006年だ。代表者は現在も、設立者の今村久美(1980年生まれ)が務める。今村は、団体の運営がうまく立ち行かない時期にはリクルート社に在籍していた(肩書きは、アルバイト、業務委託など)。
1982年生まれの今村亮は、今村久美の夫で、団体には途中から合流している。彼と稲葉隆久とは熊本県立熊本高校の同級生だ。稲葉と共にカタリバ本にも登場する。このカタリバ、現在は年間収入(会社でいうと売り上げ)で最新年度は16億円という巨大NPO法人だ(なおコラボ理事の牧師で社会運動家の奥田知志氏が代表の「ほうぼく」というNPO法人が年間収入7億7千万ほど)。
(特定非営利活動法人 「抱樸(ほうぼく)」活動計算書より )
参考までにコラボの年間収入は1億8000万から2億7000万ていどである(会計の仕方で同計上するかによる。)。コラボもかなり大きい(岸田首相の政治資金管理団体より収入額で上)が、カタリバの集金力は1桁上である。なお、カタリバの利益に相当する一般正味財産額は6億で、資産としては14億円である。
(カタリバ、ホームページより)
NPO法人の経営としては大成功の部類だ。その重役であった稲葉隆久(元理事。ナンバー3とも書籍の中では言及される)は、カタリバのノウハウをコラボへも当然に持ち込んだと言っていい。仁藤もかつて「プロジェクトマネージャー」(学生スタッフのうち、管理職的な部分も担うポジション)という立場などでカタリバに在籍していた。稲葉隆久とはカタリバで知り合ったと見られる。
(英治出版ホームページより。広告としての効果を前面に押し出すのは正直だが、広告目的を正面に書かない出版は、景品表示法の脱法行為にも当たり得そうである。)
明らかなコラボとカタリバの類似点は、①男女2名がトップになっての、相方経営(仁藤氏は稲葉氏と入籍していないが、正月には稲葉の出身地である熊本県で元旦の挨拶をしている場面などをSNSに投稿している)②助成金と事業収入双方を得る社会企業③書籍出版によるブランディング、などの手法である。
これらは後発のコラボに、カタリバ重役だった稲葉も持ち込んだものと考えていい。なおサブの男性は顔をあまり出さないというのも両団体に共通だ。そして隠れた共通点は「教育」だ。カタリバの教育事業については、細かく述べないが、行政(教育委員会)の予算を獲得したりしたほか、他にベネッセからも支援を受けたという(P213)。現在もカタリバは全国に多く拠点を持つ。
(コラボホームページにあるメディア掲載歴より)
2013年3月に法人として立ち上げ当初のコラボで仁藤が高認の雑誌と並んで登場したのが「2013年 7月 日経WOMAN「未来を選ぶチャンスを高校生たちに提供したい」である。これは実は、日経ウーマン2013年の7月号でなく8月号への掲載でややこしいのだが、従来報じた通りコラボは立ち上げ当初、「コラボ女子高等学院」として大手通信制高校と業務提携をしている。
(日経ウーマン2013年8月号)
そして日経ウーマンの仁藤インタビューによれば、2013年時点では塾を作る予定とある。この時点では貧困層ターゲットや福祉の問題などはコラボの事業として描かれていない。河合塾の大検、高認部門コスモに在籍していた仁藤夢乃氏が、教育関係を強みとするNPOのナンバー3だった稲葉隆久氏と立ち上げた団体として、高認取得などをはじめとする教育分野をマーケットに選ぶというのは、まあ順当である。
ただカタリバとコラボで相違点も存在する。コラボは代表の顔をこれでもかと強調する。カタリバの「今村久美」と言われても世間一般だと仁藤に比べると知名度は低いのではないか。おそらくさまざまな教育現場に学生を派遣しているため顔役も地域ごとにおり、またインターンの満足度を高めるためもあってか、カタリバは社会人である経営陣を団体の顔に強く出さないことの帰結だろう。
反面でコラボは、仁藤夢乃氏のTwitterアカウント @colabo_yumeno の方がオフィシャルアカウントよりも発信頻度が高いことなどから、属人的に仁藤夢乃の組織となっている。仁藤の性格も関係しているかもしれないが、①同時に先駆者であるカタリバなどの団体との区別化や、②看板をワンマンとすることで、分派の発生を防ぐ効果もあることは当然に意識されるはずである。
また政党色をカタリバが回避するのに対して、コラボは避けて通らない。あえてニッチなマーケットを狙うという意識もあるのかもしれない。しかし企業からの寄付などが、それでも維持できているのだから大したものである(ちなみにコラボは寄付してくれたスポンサーの商品をそのままどさりと写真に強くアピールするなどして、次のスポンサーへもアピールするのがとても上手い)。
ただ人間観としては未だ変わっていない部分もあるだろう。カタリバ本のP170にある稲葉の言葉が分かりやすいので引く。「人間は誰しも、熱狂的な状況を潜在的に求めているのではないかと思います。カタリバは”祭り”に似ているんです。」
おそらくこれはカタリバをコラボと読み替えても通用する。やることは極論をすればなんでもいいというところがコラボにはある。塾立ち上げからJKビジネス問題、慰安婦問題への取り組みから政党支援への移行など、その一貫性の欠如に対して我々は時に当惑する。だが、大手メディア的にコラボは「ネタになりやすい話」を分かりやすいパッケージにして運んでくれるありがたい存在である点は一貫している。
ある程度まで露出して知名度を高くすると、そこからやがて番組構成や誌面構成に欠かせない存在となる場合があって、影響力のゆえに影響力を持てる面がある。タモリ効果と言おうがジャニーズ効果と言おうがいい。もしすでに、大手メディアの中ではコラボ批判がしにくい空気が生まれているならばその計算は大したものだ。
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【江藤貴紀】