一般社団法人Colabo(以下、コラボ)が行っているバスカフェ事業が、それぞれ①東京都と新宿区およびコラボの3者契約、②東京都と渋谷区およびコラボの3者契約に基づくものであることと、その実施条件の契約書が情報公開請求によって分かった。
まず、新宿区分の契約によると「東京都若年被害女性等支援事業」をコラボが業務委託して実施、その際には新宿区役所の敷地をコラボの利用するバスとテントが使用できることとしており、敷地利用料金については、東京都が新宿区に対して減免申請を行うことが予定されるものとなっていた。この協定書は1年ごとに更新され、有効期限が年度末とされている。
(新宿区役所の東側を占有する際の配置図より)
また夜間事業の実施時間帯としては午後19時から翌日午前1時までの6時間が原則となっている。
次に、渋谷区分の契約では渋谷区立の神宮通り公園の使用許可を、東京都が申請して渋谷区が使用許可と使用料免除の手続きを行なっていた。この占有許可では、特にいつの日に限るという条件はなく公園を利用できる大盤振る舞いの内容であった。
(令和2年分の占有許可書)
東京都が渋谷区に宛てて出した都市公園料使用料免除申請書によれば公益性の極めて高いことが、使用料免除の根拠とされている。ただアウトリーチ事業ことバスカフェの実施予定についての令和4年分添付文書は、新宿で4月の何日に行う予定か、渋谷では何曜日に行う予定かについて箇条書きしただけというシンプルなものであった。
(ワープロソフトでの中揃えすらせずに箇条書きされたような、公文書らしからぬ公文書。筆者には、公務員でないペーパーワークに不慣れな人間がドラフトしたように見える。)
(令和2年度の渋谷区分実施予定表。この頃はまだ少し計画書の作りがちゃんとしていた。)
このように自由な書式で申請が通るのは、いわゆる「ネ申エクセル」あるいは「エクセル方眼紙問題」(日本の行政機関において、各種公的申請書に事前に指定したエクセル形式のファイルでの書式を使わせる慣行が定着していて、関係者がとても疲れてしまうという悪弊)に苦しんだことのある人間からは、いいなという一言だろう。
(2021年度こと令和3年度分の実施計画。ここでは8回の実施が予定されていた。公文書の中で和暦でなく西暦を使うのは公務員でない人間のドラフトによるものかもしれない。)
また取材の過程で、コラボがある自治体(Xとする)との間で、必要性が高い場合の宿泊用に、無料でその所有する行政財産を借りて部屋へ被支援者を宿泊させることができる契約を結んでいたことも分かった。コラボ代表の仁藤夢乃氏はしきりに、コラボが資金不足でより多くの寄付や援助を必要としている旨や、東京都から委託した若年者支援事業の委託金額が安すぎる旨を主張している(例えば、2022年9月発行の「当たり前の日常を手に入れるために」参照)。
だが業務委託を受けて行政から公金を受け取った上に、土地の使用料も免除されて、しかも支援対象者を宿泊させる施設についても行政Xから無料で借りていたとなると、かなりの儲けである。実際、現在の会計報告を見る限りコラボには3億5400万円の余剰財産がある。
(コラボの最新年度、2021年度活動報告書より。大まかにいうと次期繰越正味財産額が、コラボの余剰財産)
これらを前提に、以下では3つの疑問点を確認したい。
まず1つ目に、バスカフェ実施の回数と場所の問題である。例えば渋谷区での実施が2021年度は8回予定されていたにも関わらず、Twitterでコラボのアカウントのツイート歴を調べると2021年度の渋谷区での実施が4、5、6月の合計3回に留まっている。事業の実施回数について大きく相違していた場合は業務委託の報酬額算定の上で再計算が必要になるのではないか(*注1)。
(コラボのTwitterアカウントより。神宮通りでのバスカフェ実施は2021年6月9日の次は、大きく飛んで2022年5月11日である)
(令和4年分の渋谷区の協定書は、日付が大きく遅れて8月4日付で締結されている。)
また渋谷区との協定書は令和3年分の効力が2022年3月31日付で切れているのに、2022年5月11日にコラボがバスカフェ事業を実施していた。このあたりは役所らしくない事務処理であるが、渋谷区の担当課によると協定書がそれまで渋谷区には送付されてきていなかったので8月4日に書類を作成したという。(渋谷区とは協定書なしでが、2022年5月11日のバスカフェは実施されているが役所的にはこれでいいのだろうか(*注2))。
2点目は、実施時間についてである。新宿区との令和4年分契約を見る限り「活動時間」は19時から午前1時の6時間で、電車が一応通っている時間帯での実施を前提とされている。
ここで、この6時間という長さが①正味の活動時間(バスカフェで女性を支援する時間)なのか②テントの設営や片付けなどの活動準備を含む時間なのか明らかでない。ただコラボのツイートを見る限り、バスカフェは毎回4時間の開催であるのでが、もし①とした場合は本来の予定よりも活動時間が短いことになる。
(コラボのオフィシャルTwitterより)
またツイートにある22時から26時(午後10時から午前2時)という実施時間では、途中で電車が無くなってしまう。その時間帯に支援を実施する合理的な理由、例えば被支援者はバスカフェに参加すると自宅へ電車での帰宅が困難となるというデメリットと比べても有意義なメリットはあったのだろうか。これは、東京都の公金を用いる事業としての問題である(*注3)。
3点目に、東京都からコラボが事業を委託した帰結として受ける個人情報保護条例の縛りについてである。東京都個人情報保護条例は東京都が業務委託をした場合について8条で「個人情報を取り扱う事務を委託しようとするとき、又は指定管理者(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者をいう。以下同じ。)に公の施設の管理を行わせるときは、個人情報の保護に関し必要な措置を講じ、委託を受けた者及び指定管理者(以下「受託者等」という。)に対する十分かつ適切な監督を行わなければならない。」と定める。
また9条で「受託者等の責務」として「受託者等は、個人情報の漏えい、滅失及びき損の防止その他の個人情報の適正な管理のために必要な措置を講じなければならない。」としており第2項でも「前項の受託事務に従事している者若しくは従事していた者又は前項の指定管理者に係る公の施設の管理事務に従事している者若しくは従事していた者は、その事務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。」と定めている。
コラボのバスカフェ事業は2018年10月から開始しており、毎年ほぼ同内容の活動をコラボが行なっているところ、コラボはバスカフェ開始後の2019年8月に沖縄県へ合宿と称して出張している(イミダスへの仁藤氏寄稿記事リンク参照)。
仁藤氏によれば「Colabo(コラボ)のシェアハウスで暮らす10代の女の子たちと、沖縄県へ合宿に行った。」「私は2015年から5回目の訪問」で「女の子たちにとっては初めての体験なので、驚いたり、怖がったりするのではないかと思った」ものの辺野古の基地建設工事を「1分1秒でも工事を遅らせたい」と考えた。そして「参加したい人がいたら一緒に行ってみる? 行きたい人?」と聞いたところ「3人の女の子が「行く!」と言って、機動隊の横を通って地元の方々に合流して座り込みに参加したという。その後、機動隊が警告を行った後に「強制排除が始まった。初めにColaboのメンバーが「ごぼう抜き」(ごぼうを抜くように次々と排除する、機動隊による強制排除のこと)された。」とのことだ。
(2016年に当時の安倍晋三総理が行なった、辺野古基地移設反対運動に対する警察権行使の根拠に対する答弁。警察法2条「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」が活動根拠としているという。これは質問で警察官職務執行法2条1項を根拠としているかを問われて、否定する内容でなされたものである(*注4))
この座り込みに参加した3人の少女の中にコラボとバスカフェ事業で知り合った少女がいたかは不明であるが、(大きくイデオロギー的に善悪の価値判断が分かれて、なおかつその一方に立たないと刑法犯になってしまうーー違法性がないという弁解もできないーーような)、危なっかしい機動隊との衝突に、もし東京都から請け負った業務で知り得た個人情報を持って勧誘した少女を動員したらば、個人情報保護条例9条2項にいう「事務に関して知り得た個人情報を」「不当な目的に使用」に当たったのではないか。
(仁藤夢乃氏Twitterより)
またこの座り込みを行った際の様子を仁藤夢乃氏がSNSへアップした様子を見ると、コラボの支援する少女らはその顔を出して容貌を見せつける態様で座り込みに参加している。顔を含む容姿は当然に個人情報そのものであるところ、コラボは、情報だけの持ち出しではなく、顔のついた人そのものを連れ出すという特異な形ではあるが、容貌という個人情報を第三者(機動隊などの警察や、工事業務を行う予定のもの、また座り込みをしている市民グループなど)へ露出していたわけである。これは都条例9条2項にいう「個人情報をみだりに他人に知らせ」ることに当たる余地がある。
だが問題になるのはバスカフェ経由で得た個人情報だけではない。人生に迷った若年女性を募って政治動員するコラボの活動は、東京都からの受託事務にとどまらず、個人情報保護法制と真っ向から反している恐れがあるのだ。次回はこの問題をとり扱う。
注1:契約書類や条件を確認しないとなんとも言い難いが、既にネットで疑問が出されているように、バスカフェ事業を特に行うために東京都が業務を委託したりして、その分の経費としてコラボに支払いを行なっていた場合は、予定計画よりももしバスカフェ事業全体(渋谷区と新宿区合計)で実施回数が少ない場合に、交付した金額の減額請求などをしないでいいのかという問題が生じる。
注2:ただし東京都と渋谷区の2者間での、都市公園の使用申請関係書類の方は先に出されていた。3者契約の書類だけ遅れる特殊事情があったのだろうか。
注3:なお新宿区や渋谷区は別に公金を支出したわけではないが、東京都の要請に応えて都心の一等地にある土地の利用料金を免除している。もし人があまり来ない時間帯の事業や、あるいは開催が予定されていたのに、結局は行われなかった事業目的での土地占有について安易に公益目的だからとして無料へ割り引いたとすると、他の利用希望者との間で平等原則違反の問題が生じないかという問題はある。
注4:警察官職務執行法2条1項は「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。」としており、犯罪捜査についての規定。ようはその適用がされたのか国会質問で問題になる程度には、辺野古基地への工事反対座り込み運動は、刑法犯と解釈される余地がある活動である。
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【江藤貴紀】