(中野区の2015年・区議会議員選挙で伊東しんじ区議が出した公約(データベースサイト選挙公報.comより)。財政について「税投入を抑え」とあるが、自分が税金を払わないという意味だったのだろうか)
東京都中野区選出の自民党の地方議員13人が、2011年から2013年にかけてそれぞれ自分で代表を務める自民党の支部へ寄付をして、1億2403万円を対象に、所得税などを控除できる処理をしていたことが、政治資金収支報告書の記載から分かった。これは租税特別措置法が、国政政党の支部へ寄付をした場合に所得税、住民税などの減税を可能としていることから利用出来るスキーム。
従来の記事と繰り返しになるが、今の法律だと、地方議員の政党支部については5万円未満の支出は明細を報告しないでいいということになっているので、地方議員がいったん自分が代表の政党支部に寄付をしたお金については、税金だけ控除して実質上やりたい放題にお金が使えるという地方議員のみに可能な特権節税の問題が存在する*。
すでに明らかになった東京都の中央区、台東区、文京区、千代田区、新宿区、港区、大田区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区の各自民党支部と合わせると5億9991万6236円が、自民党に所属する地方議員個人の節税対象となっている。
まず、川井重勇(かわいしげお)東京都議会議員が、自分が代表の自由民主党東京都中野区第4支部へ平成23年に90万円を政治献金。
次に、高橋一実(たかはしかずちか)中野区議会議員が、平成23年に333万円、24年に301万円、25年に375万円で合計1009万円を節税対象と出来る経理処理。(なお、高橋区議のウェブサイトによれば座右の銘は 『之を修して自ら知れ(興教大師)』である )
同じく中野区議会議員の篠国昭(しのくにあき)議員は、平成23年にさらりと一筆で355万円の自分の自民支部宛寄付を政治資金収支報告書にかいている。
ただし、使い道の明細は、全くない。そして平成24年にもやはり355万円、25年に350万円で合計1110万円を寄付している。
篠議員の公式HPによれば「東日本大震災は、「個人」を絶対視して、「家族」や「国家」を軽視してきた戦後的価値観そのものを根底から問い直すことになりました。」ということであるが、税金を一部の個人が納めないのは確かに問題なはずで、そういった価値観は問い直されるべきだと筆者も思う
そして市川稔(いちかわみのる)区議は平成23年に、200万円を自分の第十二支部へ寄付して、24年にも200万円、25年にもやはり200万円で合計して600万円を自分の代表する自民支部へ寄付している。
続いて高橋千あき(たかはしちあき)中野区議は同十三支部へ、平成23年に230万円、24年に280万円、25年に300万円で合計810万円を自己の政治団体あてに代表自身から献金。
第十六支部の中野正信(なかのまさのぶ)区議は平成23年に495万円、24年には450万円を寄付して、25年には420万円で、合計すると1365万円の個人所得が、控除の対象になる処理をしていた。
さらに吉原宏氏(平成27年まで中野区議会議員)は同第十七支部へ平成23年に330万円、24年に340万円、25年に320万円で合計して990万円を献金して、節税可能な会計を計上。
大内慎吾区議は、平成23年に480万円、24年に565万円、25年に444万円を寄付で計1489万円を寄付金控除の対象となるようにしていた(ずっと同じ記事を書いていると、感覚が麻痺してくるがやはりこれはとても多いといわざるを得ない)。
まだ続けると、第二十支部の出井良輔区議(中野区自民党幹事長)は平成23年に360万円、24年に480万円、25年に360万円で合計1000万円を寄付。筆者の感覚では自分に自分で寄付というのはかなり違和感があるが、おそらく政治家というのはいちばん寄付が好きな人種のようである。
また伊東伸治(いとうしんじ)中野区議会議員は、同二十二支部へ平成23年に240万円、24年に270万円、25年に220万円を寄付で、合計額は730万円になる。
さらに、第二十三支部では平成23年に450万円を代表の樋口和正(ひぐちかずまさ)議員が寄付。24年にも450万円、25年に400万円で合計して1300万円を、樋口区議が寄付して自分の税金が控除できる処理を実施。
今度は内川和久(うちかわかずひさ)中野区議という方が、第二十六支部へ、平成23年に360万円、24年にも360万円、25年にもしっかり360万円と、ほぼ毎日1万円ずつの寄付を怠らずに3年間で1080万円を達成している。
ようやく最後になるが、若林重男(わかばやししげお)区議は第二十七支部へ、平成23年に190万円、24年に330万円、25年に310万円で合計830万円を寄付である。
以上の額は、今までに明らかになった各区の、自民党支部の中では最多である。ただ、平成26年分の政治資金収支報告書の公開は今年の秋以降になるため、この額はまだ膨れあがる可能性がある。
*ただ、この種の租税特別措置法を利用して、団体をかませた所得税回避のスキームは他の種類の団体(例えば宗教法人や公益財団法人)を用いても行う余地があり、実際使われているものと思われる。ただ、政治団体のばあいは政治資金収支報告書の提出義務があるので、真面目に調べられればすぐに発覚してしまう。
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【江藤貴紀】