英国紙、タイムズの日曜版サンデータイムズが作成したパナマ文書記載記載の法人・人名検索データベースにパナマ所在の法人として「NHK GLOBAL INC」が記載されていた点に付き、弊紙がNHKへ資本関係・取引関係を質問したところが現在まで解答しない事態に陥っている。
この質問は4月14日に、広報部堀美佐氏へメールでといかけたもの。具体的には「NHK GLOBAL INC.という社名のパナマ法人は、日本のNHK本体または子会社そのほかのグループ企業と、取引あるいは資本関係が存在 する企業か、それともまったく無関係な企業か」という内容。
同社は従来から、自分が取材対象になるのをあまり好まないもののかつてのグノシー社・著作権者無断記事見出し配信事件についての質問などには「広報としては、答えられない」「NHK情報公開規定を利用して、情報公開請求で取材して欲しい」旨の解答をしており、沈黙は初めての事態である。
なおパナマ文書は発覚当初から日本人・日本企業が関わっている旨が原文をICIJ経由で入手した朝日新聞などで報道されているのにも関わらずNHKにおいては、パナマ文書の問題発覚当初から、なぜか専ら海外ニュースである趣旨の報道に終始している。
そして、NHK7時のニュースに長らく出演していた半井小絵氏らが出演して、現在youtubeで閲覧可能な動画においても、メインスピーカーにより報道の消極性が指摘されているところである。
もっとも、人によっては「NHKはパナマで実際に事業を行おうとしていたのではないか」という見解もあるかもしれないが、役員名簿を見てみるとこの見解を支持することは難しい。例えば、ANA ISABEL ZAMORA GONZALEZ はNHK GLOBAL INC.の Tesorero と Director(財務担当および取締役)をつとめているが、この人物の名前で検索すると全く脈絡のない数十の会社で、合計100以上の役職に就いており、ペーパー企業が現地におく典型的な「ペーパー役員」だ。
だいたい、中南米でNHKの支局としてはブラジルにサンパウロ支局があるのみである。
なお、前回と同じく一般論だが重要なポイントなので繰りかえすと、NHKはそもそも放送法の規定に設立根拠を持つ特殊法人であり、その存在目的は営利ではない。しかし、タックスヘイブンへの資金移動には①租税回避行為の面があると共に、②資金の使途に付いて、外部から検証しにくくなる効果があり、役員や幹部職員による横領行為を極めて容易にするという側面がある。
つまり、仮に租税回避目的であっても現地法人を作っていたとすると、本来の放送法が予定しているNHKの役割りを逸脱した行為をしていることになる。
放送法64条以下を根拠として徴収する受信料収入を財源としており、またその受信料収入では外部の業者(業務委託や請負契約になっていて、実際の集金職などは労働法上の保護すら得られていないこともある)になぜか任せっきりで自分の手を汚すのは嫌いな「公共放送」NHKにおいては、アカウンタビリティを果たすとともに、うまくすれば自社ネタで大スクープが取れるのだから、スピーディで積極的な応答が欲しいところだ。
最後に加えると、歳入源については上述の通り受信料方式がとられている上に予算については放送法70条2項で総務大臣が内閣を経て国会に提出し、その承認を受けることとなっているのでNHKはパブリックセクターの性格が強い。仮にこれが租税回避的な行為をしていた場合には政府の役割に関する、いわゆる①「大きな政府」論者の立場からは、税収を減らすという意味で支持できず②「小さな政府」論者の立場からも、民間から公共部門が資金を余計に吸い上げているものとして支持できないことになって、当事者のNHK関係者以外はほとんど誰からも容認できないこととなるだろう。*
*NHK本体は、法人税法4条2項にいう公共法人であるために、法人税を免除されているものの、グループ内の子会社であるNHKエンタープライズ(NHKのDVD等を販売)などの分の租税負担は、圧縮する余地がある。
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4月22日追記:この弊紙記事については、4月21日付けで香港メディアが取り上げるなどして、海外に飛び火している。
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【江藤貴紀】