日経新聞社が、パナマ文書の登録企業全部のデータベースが、2016年5月10日にICIJによって公表される前から、同文書流出元モサックフォンセカ法律事務所の顧客企業として登録されている「NIKKEI HOLDING S.A.」の存在を認識していたことが、同社広報部への取材で分かった。
これは、5月10日にパナマ文書登録企業のデータベース全体(約21万件)がICIJによって発表された中にNIKKEI HOLDING S.A.という社名が存在したため、同社へ問い合わせたところ判明したもの。
同社広報担当は「エコーニュースから先日NIKKEI S.A.について質問を受けたので、NIKKEI S.A.とNIKKEI HOLDINGS S.A.を知っていたのだ」と主張している(なお、ここで「S.A.とは、法制度が異なるので全く同じでもないが、おおむね株式会社と類似した意味合いである。)。
(4月14日付けの、筆者による質問)
ところが、不思議な点がある。筆者が日経新聞社へ問い合わせた時点では、パナマ文書記載企業のうち約37000社を英紙タイムズがデータベースで公開していただけであり、「NIKKEI HOLDING S.A.」の存在は知られておらず、また筆者の質問も「NIKKEI S.A.」に関する事柄に留まっていたことだ。
(筆者が利用していたサンデータイムズのデータベース。4月時点の状態では上記の通り、約37000社分のデータしか公開されていなかった)
(4月23日に、日経新聞のカスタマーセンターらしい箇所経由で返ってきた応答。文章は、前日のクローズアップ現代でNHKがパナマ文書記載のNHK GLOBAL INC.との関係を否定した言い回しをそのまま使っている(ただし、両社への質問文は意図的にズラしてあるので、コピー&ペーストのこの回答では日本語の受け答えとして成立していない。)。)
すなわち、結論からいうと①パナマ文書にダイレクトにアクセス出来るか②パナマ文書記載企業の当事者以外には、2016年5月10日の日本時間午前3時以前には、NIKKEI HOLDING S.A.の存在を知ることは不可能である。そして、日本国からICIJに参加している大手メディアは現在まで共同通信社と朝日新聞社に限られているところ、日経新聞の、しかも広報担当は①と②どちらのルートで「NIKKEI HOLDING S.A.」を知っていたのだろうか。
さらにどうして「エコーニュースから質問されたのがきっかけで」NIKKEI HOLDING S.A.まで知ることが出来たのだろうか。
なお、日経新聞の広報担当者の応答は非常に混乱しており、「一体いつの時点でNIKKEI HOLDING S.A.とNIKKEI S.A.」を知ったのかという質問に対しては「答えられないという回答になっている(こういってはわるいが、ずっと昔から知っていたらたしかに問題は大きいだろう)。
一方で、日経新聞社および子会社と、NIKKEI S.A.ないしNIKKEI HOLDING S.A.の間に資本関係または取引関係はあるのかという質問に対しては、ここだけあっさりと広報部は完全に否定している。この点に関しては、筆者もとくに広報担当者の答えが疑わしいとは思わない。なぜならば、世界中には少なくとも194社 NIKKEI を企業名に冠している法人がこれまで作られてきたからである。これらのネットワークのうちいくつかでも使ったり、取引の種類を変える、あるいはいくつも間に会社を挟む、または以上の方法を組み合わせれば、取引関係資本関係だけが本体とない会社を作ることは容易である。
(世界に広がる NIKKEI の輪。日系移民らが作った「日系」などもあるだろうが、「日経」も一定割合あるだろう)
最後に、日経新聞へ確認したところ、パナマ法人の「NIKKEI S.A.」および「NIKKEI HOLDING S.A.」のいずれに対しても、今後なにかの法的手段をとる予定は全くないという。
【江藤貴紀】