仁藤夢乃氏のColaboが1億円のアパート助成をもらうきっかけとなった休眠預金活用法、その立役者の一人であるフローレンス会長駒崎弘樹が法務官僚への不満を示したツイートがある。
末富先生( @KSuetomi )のさすがの解説。
法務省さんにはDBS政策提言の際に随分妨害して頂いたのを、懐かしく思い出しました。
:【日本版DBS】性犯罪を犯した人はアイドルに戻れるの!? https://t.co/LP3viaK5NT @YouTubeより
— 駒崎弘樹@つながりAI株式会社 (@Hiroki_Komazaki) April 26, 2025
彼らが提言していた日本版DBSを「随分妨害して頂いた」してこられたと敬語をあえて使うことで、法務官僚より格上という、社会的地位の高さに関する自認を表すと言えるかもしれない。
(以前に一般社団法人Colaboの分析で触れた仁藤夢乃氏の新宿区課長をバスカフェに入れなかったという直接的に強気な態度と見比べると、2人の性格の違いもよく出ている)
ところで彼は数多くの政府の審議会やNHK中央審議会委員等の公的な役職を歴任している。成功した若手・NPO法人経営者だったとはいえ、その影響力の源泉はどこにあるのか。公明党・創価学会との距離の近さに関する指摘もある(筆者もこれは否定しない)。
しかしそれよりも決定的に重要なのが仁藤夢乃・Colaboの公人デビューのきっかけも作った、笹川良一の設立による日本財団(旧・財団法人日本船舶振興会)への貢献だ。
2012年、笹川陽平日本財団会長は駒崎弘樹を「わが国でも、NPO法人(特定非営利活動法人)フローレンスの駒崎弘樹代表が09年末、いち早く国による休眠口座基金の設立を提案した。」と激賞している。
2009年の駒崎弘樹の提言を認める形だ。そして笹川陽一はその後に田中康夫の名前も連ねている。
では駒崎弘樹はどこからこの着想を得たのか、彼のオリジナルなのか。実は順番が反対なのだ。先に休眠預金に触れていたのは、国会議員であった小説家、田中康夫だ。どういうことか、記録を辿る。
内閣府の審議会資料に駒崎弘樹名義の「休眠口座基金」創設の提言と調査依頼」と題する文書が残っている(ただ何の審議会であったかはリンク切れのため不明。ただし状況からは「新しい公共」調査会の可能性が高い)が、ここで「スパ!」の記事が引かれている。この「田中康夫議員の日記」とやらを見てみよう。リンク切れだが魚拓が残っている。
日記としか駒崎弘樹は資料の中で書いていないが、それもうなづける。リンク先の記事はタイトルを政府提出資料にするのが憚られる、田中康夫の「東京ペログリ日記リターンズ」だ(この連載記事はポリアモニー的な色合いが強く、元は噂の真相に掲載されていた。不倫にも肯定的な記載が多々、ペログリ日記にはあるが美人局等にあわなかったのなら不思議なくらいだ)。
この日記、暦が載っていないが曜日と内容(小沢一郎氏の民主党代表選出馬)から2010年のものである。ただこれだけならやはり、休眠預金活用については2009年の駒崎弘樹提言が先で、田中康夫氏は源流と言い難いのではないかとも思える。
だが日記を読み解くと「一昨年、僕が金融庁に照会した段階では、益金処理した「休眠口座」の睡眠預金に関するデータを、日本で活動する民間銀行や地方の銀行協会等が構成員の全国銀行協会は持ち合わせず。」とある。つまり田中康夫氏は2008年に金融監督庁(当時)に休眠預金の情報を照会をしている。
直ちに田中康夫が日本財団等の民間法人に休眠預金を流すパイプを作る意図があったと言いたいわけではない。
ただ、2012年に日本財団を事務局、駒崎弘樹をコーディネーターとして開かれた休眠口座国民会議にも確かに田中康夫はパネリストとして。
さすがによほど勘が鈍い人物でなければ、休眠預金の差配が日本財団によるであろうことは2012年には予測できたのではないか。実際、田中康夫のツイートを「笹川」で検索してみると、極めて自覚的である。
休眠預金で検索した場合にも、それが銀行によって「かすめ取られていた」という認識と国民の共通財産である旨のツイートが発見できる。ただ現在の、ガバナンスが不十分な休眠預金の差配についての箴言はないようだ。
駒崎弘樹をはじめとする「社会起業家」へ公共事業の資金が流れるきっかけとしては民主党政権時代の「コンクリートから人へ」の方針が挙げられることが多い。ただ、そのコンクリートから人へ、もフレーズとしてはほぼ、田中康夫が長野県知事になった際の「脱ダム宣言」の言い換えに過ぎない。いわば田中康夫は「ゼネコンから福祉へ」という公共事業の金の流れを変える役割を平成に果たした立役者と言える。なお休眠預金国民会議に席を連ねていた人物はその後、我が世の春を謳歌するとでもいうくらいに成功しており、例えば土井香苗氏は2025年、東京大学の学部生入学式で映えある祝辞を述べている。
東京大学学部入学式 祝辞(国際人権NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表 土井 香苗 様) | https://t.co/W2ieM5oflo
土井香苗さんは、しばき隊やColaboの弁護士・神原元さんの内縁の妻で、共産党・赤旗の常連でもあります
東大は官僚養成校だったのに、どういう人選なんだ?
— 音無ほむら(エコーニュース) (@echonewsjp) April 12, 2025
最後に2008年〜2010年の田中康夫の肩書きを見ると、参議院から衆議院へ鞍替えしているが「新党日本」代表である。同党は主に自民の郵政造反組の受け皿となるなどした。ただ奇しくもだがやはり日本財団の覚えがめでたい、一般社団法Colaboの親衛隊的行動をとった「しばき隊」のシンパとして知られる有田芳生が選挙に出馬した初陣も、新党日本である(新党日本から2度出て落選。その後、民主党から出馬して当選)。というか新党日本の副代表が有田芳生だったのだ。後知恵ながら、なんとも日本財団色の強い政党だったといえよう。
Colabo、フローレンスという日本財団、笹川家にゆかりの深い2大団体の源流に、新党日本の田中康夫、有田芳生を見るのは幻視になるだろうか。だが現実に、NPO法人、一般社団法人等の「財力」と「武力」を支える仕組みが、誰の記憶からもおそらくはすでに遠い「新党日本」にあるというのは興味深い。
「STREET JUSTICE レイシストをしばき隊5周年」会場(渋谷ギャラクシー銀河系)にて。1枚目の撮影は野間易通さん(笑)。 pic.twitter.com/ITplT59OdK
— 有田芳生 (@aritayoshifu) February 22, 2018
余談だが、田中康夫氏はなぜか(政策的には相性が悪いと思われる)おおさか維新の会から参議院選挙に立候補している。かなり急に決まった立候補だったのと、政策的立ち位置の違いから驚いた方も多いと思われる。一方で初陣の長野県知事選挙では実は、日本財団色の強い「連合」から支援を受けていた。
(ウィキペディア、田中康夫より)
休眠預金活用法の源泉が、フジサンケイグループでありながら左派色が強い連載をまま出す風にみえる扶桑社だったのは、面白い。
田中康夫公式サイトにある「参考資料」のリンク。笹川陽平ブログがとても多い(他のものはリンク切れか、見つけられなかった)。
追記1:笹川陽平日本財団会長のブログからリンク(クリックでジャンプ)として、当時の休眠口座国民会議の様子がアップされている。コーディネーターの駒崎弘樹氏と田中康夫は両隣のポジションである。
追記2:日本財団が2012年3月に英国の休眠口座活用制度についての法制を紹介する動画をアップロードしている。ただこれによると英国での同制度の導入は2009年なので、田中康夫議員が、金融庁に照会を行った2008年はそれよりも古いことになる。
追記3:2012年の休眠口座活用国民会議創設についての駒崎弘樹ブログを読むと、シンポジウムの参加者には韓国の「チョ・ヨンボク氏(釜山大学教授、美少金融財団理事)」が名を連ねている。ただこの「美少金融」という融資制度、韓国でも2009年末までに機関が出揃ったばかりで、2011年には早くも「美少金融・中央財団の幹部や福祉事業者が、収賄や横領容疑で、検察から捜査を受けた」旨が東亜日報に報じられている。
そして東亜日報報道にある「中央財団が、融資財源を任せる福祉事業者を選定する手続や同事業者の融資過程に、制度的な欠陥があるためだという分析が出ている」という話は日本において指摘される休眠預金活用制度の欠陥にもそのまま当てはまるように思える。
【江藤貴紀】
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