NHKや勝共連合(統一教会の政治部門フロント団体)の現在入居する「ワールド宇多川ビル」を所有している「アーパスプロパティ社」(以降、アーパス社)の旧名称である「ワングインターナショナルインベストメント株式会社」(以下、「ワング社」という)に吸収合併された旧会社「株式会社WANG ASSET MANAGEMENT」(以下「アセット社」)の登記簿などから、アーパス社の現代表取締役である「王海汐明」氏がかつて「汪賢」を名乗っていたものの2011年に「氏名変更」を登記していたことや、「アセット社」時代の役員のかなりの部分が中国ないし台湾系に似通った氏名を有していたことが分かった。
また後述のように別商号で同社は「山手商事」などを使用してハワイやネバダでも事業を展開、NHKと統一教会の同居することとなるビルディングを担保に33億もの融資が行われた時期もあった。これらの企業に関わる謎めいた役員たちの軌跡を追ってみよう。
(国土交通省の提供する、宅建業者情報データベースサイトより。「汪賢」氏が「汪海汐明」へと改名した後の読みである「オウミ シホン」が確認できる。*なおツイッターユーザー立花えいじ氏の指摘にあるとおり、不動産業者の免許番号が若いと警戒されて商売にいいことなどないといわれるところ、アーパス社はもともと昭和41年創業の法人で長く不動産業を手がけているにもかかわらず、宅建番号が(1)である。(2022年8月19日21時32分追記))
この「アセット社」は事業拠点や会社の持ちビルなどの間で目まぐるしく本店所在地の登記を変更したため、複雑に3つの法人番号が入れ替わっていた。というのは法務省の解説にある通り、会社の所在地を管轄する法務局が変わると、2012年までは法人番号も変更されて、登記簿は一旦閉鎖され新会社の登記簿が別の法務局の管轄する土地につくられる仕組みになっていたからである。
まず、①アセット社の会社成立は平成16年12月24日(会社法人等番号 0100-01-101999)。当初の本店は「東京都渋谷区宇田川町12番9号ワールドビル」だが、わずか3ヶ月後に本店を移転ーーすなわち「東京都渋谷区宇田川町36番6号ワールド宇多川ビル」に平成17年3月25日に移転して同日その登記がされた。会社の目的としては不動産の売買や賃貸、投資や金融などが謳われていたが、平成17年3月25日に「駐車場の経営及び管理」を追加する変更登記がなされている。また②その次には平成18年7月1日に「東京都千代田区二番町8番地7パークフォレスト」」に本店移転をする(会社法人等番号 0110-01-043876)。そして最後は③渋谷区の神山町へ本店を移転したことが平成18年8月17日登記される(会社法人等番号 0110-01-050873)。平成30年には監査役に「張維德」氏が就任して、安井氏は監査役を退任している。そして平成30年2月27日に「東京都渋谷区宇田川町36番6号」の「ワングインターナショナルインベストメント株式会社」と合併し解散する(つまりNHKや勝共連合をテナントに入れている「宇田川ワールドビル」にあり同ビルを所有していた「ワング社」と一体化したということになる)。
①〜③の間の役員構成をまとめると「汪賢」(途中で改名して「王海汐明」)が代表取締役で、その他の取締役を「汪近明」「汪裕鵬」「汪智麗」氏らが歴任、監査役は「蔵ケビン」から「安井英三」を経て「張維徳」へと交代を経ている。当初の本店「東京都渋谷区宇田川町12番9号ワールドビル」は統一教会系の「世界日報社」などが入居していたビルで、その次の本店「東京都渋谷区宇田川町36番6号ワールド宇多川ビル」は現在、NHKと統一教会の政治部門勝共連合が入居する。オーナーは「ワング社」で代表取締役は「王海汐明」氏ことかつての「汪賢」氏である(なお「ワールド宇田川ビル」の建築は1970年代で、「東京都渋谷区宇田川町12番9号ワールドビル」は2006年時点で取り壊しが行われていたことなどからすると、最初から「ワールド宇田川ビル」に本店を置いてもよさそうなものに思える)。
ところで「宇多川ワールドビル」の登記簿に目を写そう。すると実は極めて興味深い抵当権が設定されているのだ。すなわち、抵当権の設定履歴が載っている「乙区」の欄を見ると「株式会社山手商事」(ないし「ワング社」)に対する巨額の融資の担保として供されており、時には33億円の融資の担保の一部となっていたこともあるのだ。
(宇多川ワールドビルの登記簿 権利部(乙区)より。山手商事ーワング社へは複数の金融機関から入れ替わりの融資が行われている。これは商号変更前後のもの。)
ところで、現在の「アーパス社」に目を移そう。同社は登記の支店欄をみると米国・ホノルル支店が「アメリカ合衆国96813 ハワイ州ホノルル市 フォートストリート745、スウィート1500」に展開しているーーつまり人的に中国系の響きがある役員の会社であるにとどまらず、物理的にもハワイ支店を有するグローバル企業として、文字通りにワールドへ展開しているのだ。
(ハワイ州政府のデータベースより。)
だが、ワング社やアーパス社は綴りの検討もつきにくい。それでも先ほどの「アセット社」の本店所在地をいくつか併せて検索してみると、米国ハワイ州やネバダ州に業務を展開している様子が確認できる。すなわち役員が「WANG,YUPANG」「WANG,CHIREI」「OHMI,HSIHON」の3名であり、これらは中国語での「王海汐明」、「汪裕鵬」、「汪智麗」の読みと一致する。
(「書中」提供の、漢字ピンイン(発音)入力サービスに「裕鵬」を入れたもの。この人についてだけ、やや発音の推測が困難であったが「Yu pang」とほぼ一致している。なおこのサービスを使うと汪賢は「wāng xián」または「Wang Xian」と読むことがわかる。)
さらに「Trade Name」(商号)として過去に「KABUSHIKI KAISHA YAMATE SHOJI」(株式会社山手商事)を用いていたことも分かる。つまりNHKと統一教会の入居するビルのオーナーは、法人格は使い分けて複数法人を設立したり、住居を移転したり代表取締役が改名したり、また複数の会社をまとめて吸収合併したりとしているが汪賢こと「王海汐明」氏が代表の「アセット社」=「ワング社」=「アーパス社」である。
(ネバダ州政府・企業登録サイトより。2018年に活動期限が切れたものの「INTERNATIONAL INVESTMENT SERVICES, INC.」という企業の情報。)
ちなみに山手商事がハワイに展開したのは1989年以前なこともopen corporates という企業情報データベースでわかるが、汪こと王海氏らの投資活動はハワイに止まってはいなかった。英語でのスペリングなどをヒントに別情報を調べると、ラスベガスのカジノで知られるネバダ州の企業情報がヒットしてくる。役員などの記載を見ると役員は「RANDALL K ARIMOTO」というカリフォルニアに住所を持つ人物とニュージャージー州の「ALLISON CHANG」がTreasure(財務)責任者、そのほかに馴染み深いいつもの名前、渋谷宇多川ワールドビルの不動産ビジネスマンである「HSIHON OHMI」と社長には「CHRISTOPHER YUPENG WANG CHANG」(ニュージャージー州)がの記載がある。
ネバダといえば統一教会の教祖、「文鮮明」と妻で現在の総裁、「韓鶴子」氏らがカジノにはまり込み、信者の浄財をとかしてギャンブルに励んだことで知られる土地(リンク先:「やや日刊カルト新聞」)だ。ここに統一教会の政治部「勝共連合」本部を入居させるビルオーナーが投資活動会社と思しき法人を経営しているというのは、ある意味で一貫していると言えよう。
記事の初め、かつてアセット社の本店があった「東京都渋谷区宇多川町12番9号ワールドビル」もそういえば地下にカジノ喫茶があったという。どこまでも追っても統一教会を想起させるエピソードが止むことのないNHKの入居テナント管理会社であるが、その役員らはどういう人物なのだろう。
*ちなみに、汪賢氏が「アセット社」の代表であった旨は官報についての民間データベースに掲載された宅建事業者の情報でも確認できる。(ここで用いた民間データベースの方の開発者は、(「おーぷん2ちゃんねる」の管理者などとして知られる矢野さとる氏である。国立印刷局の運営する国の官報検索サービスが「官報情報を取得し、ウェブ上で独自に公開しているサイトがありますが、国立印刷局が提供している「官報」とは全く関係がありません」と述べている旨は一応付言する。)
【前回記事リンク】NHKと統一教会の関連団体「勝共連合」及び「世界平和連合」本部、同一ビルに入居が判明 ビル内テナントの交流も活発と宣伝