Menu
2015年5月以前の記事はこちら
2015年4月以前の記事はこちら

小説家・村上春樹氏 一般財団法人を設立 役員にノーベル賞の山中伸弥氏や、山極順一元京大総長など

2022年9月28日12時51分
カテゴリ:学術
タグ:

小説家・村上春樹氏 一般財団法人を設立 役員にノーベル賞の山中伸弥氏や、山極順一元京大総長など

作家の村上春樹氏が、一般財団法人を設立していたことが分かった。団体の名称は「一般財団法人村上春樹迷宮文庫」。やや奇をてらっているが過去の同氏の過去作品の内容を彷彿とさせるものとなっている。



(役員欄)


役員としては代表理事(会社でいうと代表取締役に近い)に村上春樹氏が就任、そのほかの理事(会社でいうと取締役に近い)にはIPS細胞の研究で知られる山中伸弥氏、元京大総長の山極壽一氏、中国哲学研究者の河田悌一氏(なお「歴史の終わり」「信なくば立たず」などを記したフランシス・フクヤマ氏の従兄弟である)、創元社社長の矢部敬一氏が就任している。


また評議員(会社では、部分的に株主と被る面もあるがイコールではない)には村上春樹氏の配偶者、村上陽子氏のほか建築家の隈研吾氏などが名を連ねる(そのほかの評議員としては阿部信康氏、安藤裕康氏、金森美弥子氏、柳川範之氏)(注1)。そして監事には佐藤洋史氏(同姓同名の研究者もいるが同一の人物かは分からない)が就任。


なお厚生年金の被保険者数は今のところ、2名となっており(少なくとも小説家個人の保有される法人としては)ある程度しっかりとした陣容の経営体制を持っているようである。ちなみに年齢が70歳を過ぎると被保険者資格がなくなるので、村上春樹氏や村上陽子氏ではない専属スタッフが2名と思われる。


団体の目的は、長くなるが、「現代文学を始めとして日本文学および海外の文学の研究とそれらの内外における翻訳文学の研究と普及を通じて文学の国際的な交流を図り、またこれらの成果を一般の利用に供するために大学等の研究機関と協力し、文学の国際的な振興・研究に資し、もって言語や国境を越えた市民の相互理解を向上・発展させること」でありそのための事業として①「 国内外の大学その他の機関と協力し、日本語で著作された文芸・学術その 他の著作物の翻訳者、なかんずく日本語から直接に各国の言語に翻訳できる翻訳者に関する情報を調査・収集し、それらの翻訳者の交流を促進する事業」②国内外の大学その他の機関と協力し、少数言語を含む海外の文芸・学術その他の著作物の翻訳者、なかんずくその国の言語から直接に日本語に翻訳できる翻訳者に関する情報を調査・収集し、それらの翻訳者の交流を促進する事業」③翻訳に関する世界の実情の調査・研究、翻訳者の育成を助成する事業」④「国内外の大学その他の機関と協力し、村上春樹の文学と全活動の資料を収集し、同著作権等を管理する業務」⑤「前条の目的に賛同し、早稲田大学国際文学館の活動に参加する学生ボランティアの支援」などとなっている。


見たところ①から③が心がけ規程というか、こういうことをやっていきたいという内容で、⑤は早稲田大学内に開設された村上春樹ライブラリーに関しての内容である。ただ④の部分は著作権管理などとなっているので、村上春樹氏の小説などの海外訳などについての交渉や印税の処理を司る、割と実際的な部分のオフィス業務も想定されているかもしれない。実際、村上春樹氏は随分前から、専属の事務スタッフを雇用している旨をエッセイ内で述べているので、その業務を継いでいる可能性はある(そこでは海外とのやりとりが多いのでタフな英語力が必要、などとされていた)。


(注1)阿部信康氏は同姓同名の元外務官僚がおられて、村上春樹氏のボストン滞在と近い時期に在ボストン総領事としてちょうど同地に赴任しておられたものの、同一人物かは不明。また安藤裕康氏も同姓同名の元外務官僚が存在するが同一人物かは不明。金森美弥子氏と同姓同名の人物には劇団四季出身でホリプロの専務取締役だった方がおられるが、同一人物かは不明。柳川範之氏と同姓同名の人物には東京大学経済学部教授の著名な研究者がおられるが、同一人物かは不明。北村行夫氏と同姓同名の人物には著名な弁護士がおられるが同一人物かは分からない。


役員の顔ぶれにノーベル賞受賞者で著名な山中伸弥氏がいる点や、退官した元外務官僚と同姓同名の方が役員におられる理由について考えてみると、国際的なコネクションを活かしたいということになると思う。


【江藤貴紀】


 

人気記事ランキング
 

ページトップへ戻る