(岡野あつこ氏代表・株式会社ウェルマッチの運営するCARAT CLUBウェブサイトより)
現在の日本社会、少子高齢化が言われて久しい。その遠因の一つには婚姻の不幸な結果としての離婚リスク、ひいてはシングルマザー・シングルファザーでの子育てや、あるいは養育費支払いの負担に対する警戒心が挙げられるだろう。何しろ結婚する夫婦数の3分の1が離婚するというぐらいである。
ただ、どんな社会問題にもそこから利潤を得ている人々、あるいはマッチポンプのようにその問題を煽ろうとする人物、団体すら存在する。今回は「離婚産業」ともいうべきスタイルで利潤を得ている第一人者の一人、岡野あつこ氏の「離婚連鎖ビジネス」をまず扱う。結論からいうと離婚カウンセラーを名乗りながら、離婚を扱う弁護士事務所とも提携して結婚紹介所も運営するという「やり手」の商法だ。なおこの離婚カウンセラーと弁護士事務所の関係は、連載で次回以降も登場するので見てほしい。
(岡野氏HPより)
現在、国内に「離婚カウンセラー」やそれに類する肩書きの人物は複数いるがそのルーツ(あるいは師匠筋)で名前があげられることが多いのが岡野あつこ氏だ。彼女はいかなる人物か。まず、その運営するCARAT CLUB のホームページを見てみると、以下のような経歴だ。
1976年 立命館大学 産業社会学部卒業(専攻:職業心理学)
1991年 岡野あつこの離婚相談室 設立
1993年 バツイチネットワーク カラットクラブ運営開始
2001年 特定非営利活動法人 日本家族問題相談連盟 設立
2001年 離婚カウンセラー養成スクール 開校
2004年 AZCOブライダルサロン 開設
2009年 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科卒(MBA取得)
2010年 マリッジカウンセラー養成スクール 開校
2018年 専門家チームによる「もめない離婚」を目指した”Team Best Divorce”を設立
つまり、「岡野あつこの離婚相談室」では離婚の相談を受けて、一方でブライダルサロンでは再婚の結婚紹介所を経営するという仕組みで人とお金がぐるぐる動いている。少子高齢化で結婚ビジネスが下火になっていると言われる日本であるが、要は離婚させて再婚させるの繰り返しをすれば何度でも結婚紹介所で手数料が手に入る(しかも結婚中も悩み相談でカウンセリング手数料を得つつ、離婚相談とその次の再婚紹介所での顧客をキープできる)という水際だったやり口である。
(岡野氏の夫婦問題相談室は36000件の相談実績があるという)
しかしこの「カウンセリング」料金も11000円からと安いものではない。将来の婚活(再婚)ビジネスの顧客を集めて引き留めながら「カウンセリング」でも料金を取るという商売上手さはかなりのものだ。当サイトで扱った仁藤夢乃氏の事業(バスカフェで困窮女子を見つける業務委託を受けて東京都から収入を得るとともに、困窮女子向けアパートも経営する)にも相似形かもしれない。
さらに、夫婦の悩みを聞いた後で「やり直しサポートプラン」と「離婚サポートプラン」を行なっているのも一粒で2度美味しい。クライアントの気持ちがどちらに転んでも、岡野氏はうまくいく仕組みである。ただ気になるのは「必要に応じて弁護士の紹介、法律相談に行く前の資料集収集、整理の方法アドバイスは無料で行います。その他、探偵、・調査会社の紹介なども行っています。※法律の相談は専門の弁護士と連携します。」というくだりである。
「弁護士の紹介」、「法律の相談は専門の弁護士と連携」とあるのは(その実態が不明であるので断言しようがないが)弁護士法ないし弁護士職務基本規程の禁じる非弁提携に該当する余地が(特に、関係する弁護士の側に)あるのではないか。
しかしポイントは、離婚の斡旋と同時にブライダルサロンの運営という仕組みである。もし日本が少子化で独身男女が減っているなら「結婚している男女を別れさせれば新しく、結婚志望の独身男女が増えるではないか」というのはコロンブスの卵的な発想の転換だ。
ただ、あくまでそれは岡野氏にとってはビジネスチャンスであるが、彼女のような人物に結婚生活の相談をするのは考えものではないか。というのは悩みを抱えた既婚者には①婚姻を継続する②離婚するの2つの選択肢があるところ、①だと岡野氏の再婚ビジネスの顧客になってもらえないーーーつまり岡野氏の立場としては②の離婚を勧める方に経済的インセンティブがある。一般に離婚をすると社会経済的に不利益が大きい(単純にこれは2つの物件を借りて住むと家賃も高くなる。後また家事においても炊事から洗濯まで、バラバラに行うため非効率となる)ことは知られているところ、依頼者との間に露骨な利益相反問題がある気がするがいかがだろうか。
なお岡野氏が愉快なのは離婚を勧めるお仕事をしつつ、「夫のための熟年離婚回避マニュアル―妻から離婚宣告を受けないために」などという書籍も出版して離婚の不安を煽ることで収入を得ている点にもある。
さらに岡野あつこ氏は会社と同一のマンションの一室(東京都渋谷区千駄ケ谷)に日本家族問題相談連盟なるNPO法人も設立している。その事業紹介を見てよう。すると一つ目に「ステップファミリーにおける、家族の絆の形成における助言、支援活動」「結婚、夫婦、ステップファミリーに助言、支援活動を行う人材育成及び資格発行」を行うという。つまり再婚後の家族の悩みにも岡野氏は商機を見出していることが分かる。
さらに面白いのは、「離婚カウンセラー養成スクール」の運営である。それによると「受講を修了される方へ、「NPO認定離婚カウンセラー資格試験」、実施のご案内を申し上げます。本試験を受験し合格された方は、当連盟への加入を条件に、NPO法人日本家族問題相談連盟認定離婚カウンセラーの称号を使用し、活動することができます。」などとある。なお試験の受講料は16500円である。
またWebページは準備中ながら「独立のための結婚相談所開設の流れ」なる箇所もある。
つまりは再婚用の婚活ビジネス市場を開拓する(離婚者を増やす)ための「営業マン」を岡野あつこ氏は要請しているという話ではないのか。一般にだが結婚生活で全てにおいて満足ということは難しく、どこかに不満点はあるものだ。ただ「もっといい自分」がどこかにあるのではないかと思って離婚、別居をしても(うまくいく例はあるかもしれないが)、1家族が2つに分かれれば生活コストは増す、引越し費用に家具の廃棄なども必要で、特に子供を中心に親族・関係者の間にも心のしこりが生じる。
なお当サイトのヒット企画は「一般社団法人Colaboの分析」だったので当然に一般社団法人の話もお出ししたい。もう予測済みかと思うが岡野あつこ氏は一般社団法人「離婚相談連盟」も運用している(やはり同一住所)。
(弁護士事務所などに繋がっている図)
離婚・再婚の相談は、岡野氏ら「離婚カウンセラー」にとっては確実に利潤をもたらす商機であるかもしれないが、そのマイナス面、つまり離婚に伴う外部不経済(特に子育て中世帯の場合「シングルマザー製造機」となる場合が多いであろう)からすると社会全体としての厚生を損なう結果となる。
さらに、同一住所で岡野あつこ氏は「AZCOブライダル」という結婚紹介所も運営しており、会員数は10万人を超えるという触れ込みだ。どこまでも「夢を売る」お仕事であるが離婚カウンセラーが結婚を斡旋というのはブラックジョークに聞こえてしまう。
まるで仁藤夢乃氏がまだ良い人に思えてくるぐらいに、ちょっとまずい感じがするビジネスを展開する岡野あつこ氏だがメディア出演歴は仁藤夢乃氏に負けない。NHKをはじめとする大手メディア各社に、以下のような華々しい露出をしている。広告費に換算したら相当な金額になるだろう。
(岡野氏・ウェブサイトより)
一般社団法人離婚相談連盟のウェブサイトを見ると、弁護士事務所向けの紹介、連携案が謳われている。「弁護士法72条遵守」とあるが、まあこれは弁護士法遵守と書かないといけないぐらいには際どいビジネスということではないか。
なお上記のような案件の紹介についてどの弁護士事務所が受けているのかは筆者の確知する限りではないが、筆者先に挙げた特定非営利活動法人「日本家族問題相談連盟」のウェブサイトで「認定カウンセラー」として紹介されていた弁護士としては江藤みはる、本条まゆみ、山下環氏が確認できた。少なくとも離婚に関心の強い弁護士であろという程度のことは言えるだろう。
最後になるが一般社団法人として「ハッピーライフカウンセリング協会」も岡野氏は経営しており同一住所に入居している。
紹介によると「資格を取得できたら悩んでいる人の役に立てるでしょうか」「はい。もちろん学んだことはすべて活かすことができます。ただ、カウンセラーの資格取得はゴールではなくスタートだと強く意識されるのが良いでしょう。なぜなら悩みといっても人によってすべて異なるからです。ストレス、心の悩み、不倫、浮気、失恋、子育て、不妊・妊活、職場の人間関係、介護問題、LGBT、性、お金・・・信頼されるカウンセラーを目指すなら、資格取得がスタートだと心得てください。」などとあり、人生全般の悩みに関する資格ビジネスを行っている。
その資格を取得するには提携教育機関の「ヒューマンアカデミー」で講座を受講するのが前提となっているところ、その講座も講師はやはり岡野あつこ氏である(ただしヒューマンアカデミー自体の経営陣やグループは、岡野氏とは別である)
【2023年4月25日20時:00分】関連情報を追加する
岡野あつこ氏は本名「岡野厚子」というようである。
また特定非営利活動法人の役員名簿が東京都HPによると以下の通りである。