5月27日、外国特派員協会でLINE社のCEO出澤剛氏が記者会見を行い、LINE社の沿革と現状、将来像について語った。ただし、同社は再び東京証券取引所への株式公開(IPO)申請をすると報道されているものの、質疑応答では我々は上場企業と違う、という点を強調。また暗号セキュリティや、アクティブユーザー算定方法等これまでLINE社の語ってこなかった部分の質問へ応答した。
J-Cast記者「業績開示の仕方について質問です。今のウェブサイトでの開示は『売上高』だけですが、『収益』まで含んだものに、これを変える意図はありますか?」
(LINE社のリリース資料より。売上の伸びは強調されている)
出澤氏(以下、A)「我々は上場会社ではないので、我々の基準で開示しているわけです。」
James Simmons 氏「そうですか。非上場でも、サントリーとかでは、上場じゃないけどかなりタイトな開示の仕方をしてますが(*1)。」
フランスRTF放送のジョエル ルジャンドル・小泉記者「暗号化など、LINEのセキュリティについてお願いします。」
A「セキュリティについては、私達がユーザーからもらう情報は電話番号と電話帳の情報でこれを私達に見えない形で管理しています。また、ユーザー間の通信は完全に暗号化されていて、私達自身も見られないという状況です。さらに進めて、暗号化ではユーザーの発信時に暗号化を施して、相手に届いた時点でも暗号化するというEnd to Endの試みも、ヨーロッパなどではすでに進めています。」
ジョエル氏「アジアと日本ではどうですか?」
A 「今、手元にないですけど、多くの国でそれを選べるようにしています.それを今拡大してる状況です。日本ではまだです。」
Q 「政府が情報をくれと言ったら、どうしますか。例えば捜査のため、とか。」
A「基本的には準拠法は日本になっていて、後は国によって状況が変わることもありますが、基本的にはさっき言った方針に則ってやっています。法律に則った手続の場合は開示するけれど、手続を外れた形で開示すると言うことはありません。(*2)」
江藤貴紀「LINEのアクティブユーザー数算定方法について教えて下さい。さきほど、月間アクティブユーザーは2億人ほどと仰られました。これですが、LINE社で出している各種のアプリも含んだ数字でしょうか。例えば(ゲームの)ツムツムをプレイしようとするとLINEにログインする動作を端末が取ります。他にもLINEアンチウイルスですとか、いろんなアプリがあるわけです。これらの利用者も含んで2億人ということでしょうか。
また、仮にLINEの通常メッセージ機能と、ツムツムを1人のユーザーが使用した場合には、1人と2人、どちらで計算していますか?」
(LINE社の媒体資料より。その後、4月には2億人を突破したとされている。)
A 「細かい計算はあるんですが、LINEとLINEのプラットフォーム上で動く他のアプリを足して、重複は排除しています。その内訳は申し上げられないのですが、今開示している数字を厳密に言いますと、重複を排除してそしてLINEのプラットフォーム上で活動しているアクティブユーザー数になります。しかしながら、多くのユーザーがLINEのメッセンジャーを利用していますので、大きな開きはありません。」(*3)
(アクティブユーザーについての会見動画リンクは1時間31分6秒より。ここのリンクをクリックでジャンプできる。)
*1 ただしサントリーは、子会社上場という方法を取っており、このサントリー方式については異例という報道がある。
*2 このコメント内容からは、「自社では見られないような暗号化をしているが、政府に提供するときならば、通信内容が(少なくとも政府には)分かるような状態で提供している」、ということになる。
*3 「LINEのプラットフォーム上」がどこまで含むか(例えばLINE CAMERAについてはどうか)は分からないが、少なくともLINEログインの動作をするアプリは含まれると思われる。
ところで問題となるのが、このMAUの数え方である。例えばライバルである欧米で人気のメッセージアプリ「ワッツアップ」は月のアクティブ数が8億人であるが、これとLINEの月あたりアクティブユーザー数は同列にこれまで語られていた(例えばこのリンク先のITメディア報道など)。出澤氏は、ゲーム利用者数などを含めても、メッセージアプリの利用者と大きな開きはないというものの、内訳の分からないゲームユーザーその他のLINEがリリースしているアプリ利用者数を含むとすると、LINEと競合のワッツアップの差はより大きいということになる。
また、売上高の公表はするが収益の公表はしない(また会見で聞かれても答えない)などの点も、発表の仕方としてどうも他の企業と比べて分からない点が多く、ビジネスモデルなどについて不明点が多く残るというのが、率直な意見である。
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【江藤貴紀】