2017年、1月17日にCIAは機密解除された公文書約1200万ページ以上をウェブ公開した。
この記録検索システムはCREST(CIA RECORD SEARCH TOOL)と呼ばれており、CIA公式サイトによると、1940年代から1990年代にかけてのものである。
また筆者がCRESTで検索したところでも開示されている文書の作成期間は、早くとも1941年(CIAの前進、OSS時代のものを含む)から、遅くは1997年にかけてのものが含まれる。
ところで1200万ページというと膨大な分量に思えるが、果たして作成された文書のうちどれほどが公開されているのだろうか。組織の規模と予算、公文書の作成日時から検討したい。
まず、CIAのサイトによれば公式な人員数は非公開だが予算は1997年会計で266億ドル、1998年会計で267億ドルとある。
一方ワシントンポスト紙が報じたエドワードスノーデン氏のリーク文書によればCIAの実質予算は526億ドルで、米国の情報機関職員数は10万人超とある。もちろん、この10万人の全体がCIAで働いているわけではないが、筆者がこれまで探索したところでも、相当量の文書が他の機関とCIAで共有されている。
このうち少なくとも控えめな数字、CIA公式サイトのものでいっても、大いに時期により変動はあるだろうが、2兆円〜3兆円規模の年間予算があるわけだ。また公開された公文書の期間を56年とすると、1年を365日で計算しても20440日となる。
そして、極めてラフな検算だが1200万ページを2万日で割ると、公開された文書は、1日あたり約600ページである。やや、これは少なくないだろうか?
ところで、情報機関ではないが、商業ベースで2兆円の予算がある業界ではどの程度の文章を作成しているだろうか。ちょうどであるが数値の出ているところで見てみると、国立国会図書館のサイトのレファレンス協同データベースによれば「2012年の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比 3.6%減(644億円減)の 1兆7,398億円となった。」「2012年の新刊書発行点数は過去最多の 82,200点」とある。ここで、雑誌や既刊の本を除いて、書店に並んだ新刊書籍のみのページ数を概算してみると、1冊あたり200ページとしても1644万ページ分は2012年に日本国内で新刊書が発行されたことになる。この1644万ページという数字は原稿やゲラではなく、最終的に書店に並んだ本の項数である。
これよりも、50年以上に渡ってCIAが作成した文書の量は、少ないわけである。無論、廃棄された文書もあるだろうが、控えめな自己申告からしても予算2兆円オーバー(冷戦終結後で911テロ以前なので、CIAの組織規模が縮小していた時期である)の組織が作成する文書として、1日600ページは過少と言わざるを得ない。
機密指定の解除されていない文書が相当量であり、実際のところ内部に保管されている文書量は1200万ページ程度には止まらず、0の桁が全く違うと推定するのが自然である(であるから、何か変わった文書が出てきた場合には、特定の意志を持ってCIAが出したという蓋然性が高まる)。