11月16日、日本外国特派員協会で経団連(日本経済団体連合会)の米倉弘昌名誉会長(住友化学株式会社・相談役)がTPPとアジア経済の展望について英語での記者会見を行った。
その中で米倉氏は、国内経済と国際経済およびアジア太平洋地域の成長について楽観している旨を強調した。まず、日本経済は下落中にあるがファンダメンタル(主な経済指標)は悪くないので、これから緩やかに日本経済は回復基調を描き、力強い継続可能な成長になると展望。
いちおう中国がこの6年で初めて,経済成長率が6%を切った点に触れたものの、後述の通り、楽観的な観測を述べた。また米国と中国ばかりでなく、アジア太平洋地域の市場と経済成長へ目を向けることが日本経済に必要とした。
そしてTPPが国内農業へ与える影響についても、経団連は、JA(全国農業協同組合中央会)と2013年にタッグを組んで日本の農業の競争力強化を経団連は後押ししてきたと強調した。
会見後の質疑応答では、藤田裕行氏から中国経済はバブルでないかとの指摘を受けたが(質疑応答の該当箇所動画はここからジャンプできる)、中国経済がバブルという前提には立っていない答弁を行った。
藤田記者「今後2,3年のアジア経済の見通しについて伺いたいと思います。中国経済はバブル状態と思うのですが、このチャイナバブルが崩壊した際にどのようにTPP圏の経済を守ることが出来るとお考えでしょうか」
米倉元会長「まず、中国の経済は成長していくと思います。確かに中国にとって必要な経済構造変化に伴い、経済成長率は鈍化しました。報道では中国経済が低調であるという話もありますが、中国の方が日本に来られているのをみれば分かるとおり、チャイナは裕福になっているのです。中国の経済成長は堅調です。中国はAPECの一員であるので、その経済はアジア全体に影響するでしょうけれど、深刻な帰結になることはないでしょう。」
なおTPPと出身母体の住友化学の関係についてはIWJ記者が日本語で質問(注1*)。住友化学は(遺伝子組み換え作物等を扱うバイオ化学メーカーの)モンサント社のエージェントですが、モンサント商品により人体への健康が危惧されないかと指摘した。
しかしその点については「住友化学はモンサント社の商品を日本で販売することはしていません。なので誤解の無いようにお願いします。そして、モンサントの除草剤(ラウンドアップなどのことと思われる)は現在、効かなくなっているので日本で住友化学が販売すると言うこともありません。両社のパートナーシップについていうと、住友化学は商品のライセンスをモンサント社に与える立場(例として、リンク先日経新聞記事参照)です。」と、米倉氏は反撃気味で応答した。
(USTRこと、米国通商代表ウェブサイトより。自国向けの説得材料かもしれないが、他国の産業関係者からは警戒されそうなロゴを作ってある。なのでまあ、やや感情的な質問が出るのも無理はないかもしれない)
注1* この日の会見は英語のみで行われており、日本語での質問は禁止であったためこの日本語発言へは特派員協会スタッフから制止が入った。だが米倉元会長は、私が通訳してあげるよとして最初に日本語で質問を返してそれから、質問と回答の両方を英訳した。別に提灯記事を書くつもりはないが、質疑応答のハプニングにも動じない「横綱相撲」を見せつける貫禄で、やはり何だかんだと言って財界でも出世する人は相応に優秀だという当たり前のことを再認識させられた。
【江藤貴紀】