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子供が「引きこもり」になったならーーー実務家の視点から、プラグマティックに考える。

2015年9月5日01時19分
カテゴリ:学術

子供が「引きこもり」になったならーーー実務家の視点から、プラグマティックに考える。

現在の不登校は義務教育全体で1.2%、高等学校では中途退学率が1.7%となっている(平成26年度の文部科学省発表資料)。それについて、実際に親としてはどう接するべきか、おそらく様々な断面のある問題だ。



この点について、いわゆるサポート校の教師を経て、通信制高等学校の教頭となり、現在は不登校・引きこもりの専門カウンセラーとして京都で教育相談所を開いた金馬宗昭氏に、実務家の視点からお話をうかがった。


———引きこもり、不登校に関わり合った最初のきっかけは?


金馬氏(以下、敬称略)ぼく自身が20代で一時期ひきこもりを経験したことです。僕は大学を卒業後、非常勤講師をしながら教員試験合格を目指して仲間と勉強していました。仕事と受験勉強を両立させていた仲間が全員合格したにもかかわらず、受験に専念した僕は1人不合格となり、落ち込んで・・・大人のひきこもりです。

その後不登校の子どもと関わるボランティアを通じて立ち直り、もっと不登校やひきこもりの若い人の力になりたくて、サポート校というところで働き始めました。その後、サポート校が立ち上げた通信制高校で教頭を務めました。現在は独立し、不登校とひきこもり専門の相談所を立ち上げています。


———今まで見られた中で、こういう家庭の子が多いという傾向はありますか。


昔の職場とか、いま自分個人で見ていると、ある程度、豊かな場合が多いです。これは金銭的な理由でバイアスがかかった結果かもしれませんが。それと属性でいうと、帰国子女がわりといます。これはまず、日本の学校とのカルチャーギャップもあります。


経済的に、余力のある家庭が多かったです(2016年追記:確かに、そうだろうなと感じられる風景をいくつか目にする機会があった。)。一概には言えませんが。また学力については、帰国子女、不登校経験者、超がつく進学校を中退した子など、いろいろいました。


———不良仲間とかとつるんでいる場合や、非行問題の子はどうしていますか?


不良とつるむっていっても、それが本人にとってプラスとマイナスどちらのほうに働くかですよね。法律はもちろん守ってもらわないといけないけど、家庭にいるよりもそちらのほうが得られるものがあるときは、それはそれで仕方ない。


あと、もともと20代のときに学校の非常勤講師をしていたんですよ。そのときに実はけっこう荒っぽい子を見ていたから、そこは免疫がありますね。コツは・・・みんなの前で叱らないことですかね。1人になって向き合うと、普段は不良っぽくしていてもやっぱり普通の子供なんです。反対にみんなの前で叱っちゃうと向こうもガーッとなって来るからだめですね。



———女の子の場合、たとえば水商売とかの世界に行く例はありませんか?


あります。高校にいかなくて、キャバクラで働くとそこで「必要」とされるじゃないですか。ただキャバクラや風俗の世界でディープな方に進みすぎると、人生の中で危険になってくることが、どうしてもあります。


それで、どうやったらいいかというと家の居心地を良くすることです。家にいなくてキャバクラで働く子は、家よりキャバクラの居心地がいいから働いているわけです。



他の親族との同居など家庭環境を良くすることに限りがある、もしくはどうしても家族が子どもに向き合っていただけないなどの場合は、多少荒療治ですが高校卒業後は遠方に進学するなど早期の自立ができるよう勧めた経験もあります。


———相談者と関わる中で、勉強をみる場面はありますか? あるとしたら、勉強面と人間関係の比率はどのくらいでしょう?

うーん、通信制高校で教師として生徒と関わる中でも、カウンセリング的な関わり方と勉強の指導の比率は5:5でしたね。通信制高校では高校を修了するまでの勉強自体はレポートが基本なので、それほど大変じゃないです。でも大学に入ってから英語や第二外国語が必修ですよね。それでドロップアウトしてしまうと元も子もないから、英語はとにかくきっちり基礎を固めるように指導をしていましたね教えますね。今は相談所を開いて、人間的な面に重点がありますけど、勉強も必要があれば見ます。現在はカウンセラーとしての関わりなので、「生徒」ではありませんが。


————このお仕事で、いわゆる燃え尽き症候群にならないために心がけは?


ぼく自身が、誰かに相談することですね。子供の頃から自分自身が相談するのがヘタだったんです。でも、今は仕事の悩みを心がけて誰かに相談しています。あと各機関との連携みたいなのもありますよね。


———例えば?


高校もありますし、病院の先生とかともぼくは積極的に、昔から助力をお願いしていますね。あと警察もありますよ。例えば、子供が家庭内暴力をふるったりすることがあるわけです。でもサイレンが鳴ってパトカーが来るのって、どの家庭でも嫌ですよね。


だからそういう家庭のときは、あらかじめ警察の担当課とも相談しておきますね。それでサイレンなしで近くの交番のお巡りさんに静かに来てもらうようにしています。


———普通の学校教育に足りないところは、どこだと思いますか。


不登校対応に長けた人材はまだまだ求められていると思います。現場の先生方と接したり、相談者のお話を伺う中で、どうしても「生徒が辛くなるだろうな」と思う対応をされる先生はいます。担任を変わって頂きたい、変えるべきだと思うケースもあります。現実的には難しいことでしょうが・・・。


学校の先生方が家庭への介入を避ける傾向も昔に比べ、かなり強くなっていると危惧しています。しかし、不登校対応では、家庭の環境を変えなければどうにもならない状況も少なくありません。ご家族の協力を求めるのは必要なことだと思います。僕は、必要を感じれば思い切り介入させていただいています。


————どうやったら元に戻りますか。


一般に何かを行動することですよね。それで何がいいかっていうと「人の役に立っているな」という気持ちが出てくる。これは、アルバイトでお客さんに喜ばれる、職場で必要とされる、同級生にパソコンを教えてあげたい、などです。そして逆に人の役に立つことがなくなるとネガティブな思い込みが激しくなって、辛くなるんですね。だから外の世界に出ることです。


———逆に、やったらいけないことは何だと思われますか?


「正論責め」することですね。そうすると家も外も快適ではなくなってしまいます。それで僕は最初、保護者の方とお話をするようにしてます。本人の状態とか、場合に寄りけりですが、とにかくまずは親御さんと話します。お父さんとかはどうしても、正論で責めて本人を辛くしてしまう場合が多い。あと、学校への進学とかでお母さんがお膳立てをし過ぎることもあります。


あとアスペルガー症候群などのときは本人の傾向があるので、それを大事にすることですね。


———ひきこもりは、日本特有の問題でしょうか?


社会の文化的な影響は、本人に保護者、その他の周囲に出ていると思います。例えばアメリカなどだと、学校に行かなくてもヤンチャじゃん、で済む場合が多いです。不登校でも「ひきこもり」はないんじゃないでしょうか。あとオーストラリアも日本と文化的な傾向が違って、仕事を転々としたりとかは問題にならないようです。「気が変わったから移った」というだけですね。ただ韓国などの場合は日本と似たような面、あるいはもっと大変な面があるかもしれません。


———最終的な目標と手段は、どうなるでしょう?


それには、どこかで制限が必要になりますよね。例えばPCをするでも、オンラインゲームを続けたら切りがない。WI-FIっていうのはおうちのどこでもネットにつながれるから危険ですよね。あくまで中学生の電子機器の平均利用時間は1時間だから、それです。


なので、どこかの段階で、「3ヶ月後月からは携帯代とネット代を自分で払わないと解約するよ」とか、「3ヶ月後には就職相談所に行くよ」というリミットを作ることです。その上で、先程のようにやり甲斐を見いだすことをすること。


実は今は高年齢の引きこもりも増えています。20代、30代は平気でいて、40代の場合もあります。なので、親御さんが年金生活という場合もあります。年齢の関係があるので今は自分より年上の人たち、50代は見ていませんけれどそのうち見るようになると思います。最終的な目的はといえば、本人の幸せです。


*この記事は、8月30日に行われた金馬宗昭さんのインタビューと講演会、著書の記述を再構成したものです。


 

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