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民主党・枝野幸男氏「共産党との連立政権は現実的ではない。組んでしまえば票が逃げて自民が喜ぶだけだ」

2015年11月16日17時12分
カテゴリ:国内

民主党・枝野幸男氏「共産党との連立政権は現実的ではない。組んでしまえば票が逃げて自民が喜ぶだけだ」

11月16日、「安倍政権に対して野党は結集できるのか」と題して日本外国特派員協会で民主党の枝野幸男幹事長をゲストに記者会見が開かれた。枝野氏は最初に20分と予告して、立ったまま原稿を読まずに早口でスピーチ、それから質疑応答では民主党時の普天間移設問題に、自衛隊の海外派遣時の課題から原子力政策まで、幅広い質問が飛び交った。歯切れよい明晰なスピーチとみるか、非現実的なエクスキューズとみるか、味方は読者の方にお預けして、以下ほぼ全文をお伝えする。




(クリーンなコピーでないが、別に何かの意図がこもっている訳ではない)


枝野幸男氏:まず、フランスでのテロ事件について哀悼の意を表します。またカンボジア野党・第一党のサムレンシー氏に逮捕状が出たという件についてですが、岡田党首も実は彼と会談をしました。内政干渉にあたるようなことは申し上げるべきではないが、この状況に私どもも強い懸念を持っていることを申し上げます。


本題に入ると、最近数日の動きを私は党の危機とは思っていません。私どもの唯一で最大の課題は、来年の参院選挙です。どうしても与党を過半数割れに持ち込みたいと思っています。一つのテーマは安全保障法制を巡る安全保障と法の支配です。念のため申し上げますと、安保政策ではなくて、法の支配の問題です。


そしてこれだけでは与党を過半数割れに追い込むことは出来ないと思っています。もう一つのテーマは経済です。短い時間で私どもとアベノミクスの違いを説明させていただきます。アベノミクスは短期的経済政策としては成果を上げてもいるし、理にかなった部分もあると認めます。金融緩和や財政出動は、短期的経済にはプラスですし、労働分野の規制緩和もやはり短期的には企業の利益増大になります。



(会見動画。少なくとも「政策論」については非常に雄弁で説得的であったと筆者は思う。)

しかしバブル崩壊以降の日本経済を再生するためには、あくまでも痛み止め、カンフル剤に過ぎないと思っています。本質的な治療をするためには我が国の潜在成長力を上げないといけない。このためにはいくら短期的な政策をとっても効果は無いというのが私達の考えです。


明治維新からの経済成長と、日本の高度成長を作り上げてきたのは、2つの意味での中間層です。一つは経済的意味での分厚い中間層で、これがますます層を真下ので、輸出主導の外需型経済から内需主導の先進国形経済に高度経済成長期に転換しました。


もう一つは知識・学力といった意味での中間層です。例えば明治維新の時代でも非常に高い識字率を他国と比べて誇っていました。これがあったので私どもは非常に高い経済成長を享受できたわけです。これがこの20年の間に崩れています。貧困の連鎖のために親の貧困が子供の教育に悪影響を与えたまま義務教育を終えるというケースが非常に増えています。


あるいは日本には奨学金という名前の教育ローンしかありません。なので意欲と能力がありながら高等教育を受けるのを断念する若者が増えています。更に雇用規制緩和によりOJTによりスキルを高める機会を得られない労働者の数が4割を超えています。


経済的に分厚い中間層の崩壊が、国内消費を冷え込ませていますし、貧困の連鎖も国内消費を冷え込ませています。購買力などに関しては、実は資産を持っている高齢者も、年金医療介護の不安のために蓄えた資産を貯蓄に回します。従って、経済的な理由で教育の機会に恵まれない若者、少子化、高齢社会対策、こういったことは、実は社会保障政策ではなくて経済の再生のために必要なことだと考えています。


いずれも速効性のない、中長期的に高価のある政策です。速効性のあるアベノミクスに比べてどうしてもアピール力の弱さがありますが、実は日本経済の成長へはアベノミクスよりも効果があると考えています。


外国特派員協会の皆さんはご存じかもしれませんが、民主党政権時の日本の実質経済成長率は年率1.7%でした。しかも東日本大震災のダメージを含んだ数字です。(一方で)もうすぐ3年になる安倍内閣は、プラスの0.6%にとどまりこの2回の直近の四半期はマイナスです。私達の政策こそが日本経済の立て直しに繋がると思います。(最初に)お約束の20分でしっかり私の話は終わらせていただきます。


日本での、真の保守は民主党だ。自民党ではない


Q まず最初に民主党が維新の党とくっつくつもりはありますか?

A 私どもは、政策が近いと思われる維新の党を含めて、出来るだけ広い野党が深い協力をすることが望ましいと思っています。その先に維新の党とは一つの党になる選択肢を決して否定していません。しかし連携協力がどの程度出来るかは、政策についての協力がどの程度出来るかによって変わってきます。


これは今後の課題であって、今すぐに他の党のどこかと一緒に出来る体制にあるという状況ではございません。私達の党としての政策を強めていくとともに、維新の党とは一緒になれるかもしれないと言うことで党の執行部は一致しています。また党の大勢の方も同じだと思います。


我々は20万の党員・サポーターを掲げている組織政党なので、国会議員だけの一存で党を無くすとか決められるわけではありません。党員の多くは今の党を、しっかり立て直していこうという考えだと思います。


あと保守とか私達、リベラルと呼ばれている人たちの定義が人によって全然違っているので、これを整理しないといけません。今の安倍さんの姿勢はアメリカでは極右かもしれませんが,日本とアメリカは政治の歴史が違います。なので日本で保守かどうかは別の問題です。そして日本は多数の神々を頂いている歴史を持ち、日本での真の保守は、アメリカでいうリベラルの私達だと思っています。


Q オーストラリアの記者です。労働市場について触れましたがどのような政策がありますか?

A 労働市場については日本の場合、正規雇用、期間の定めのない雇用を増やしていくことが望ましい。年功序列・終身雇用については近年はネガティブな面が語られることが多いですが、今の日本にとっては先ほど申し上げた(筆者注:中間層の崩壊問題と思われる)側面から、プラスの面が多いと思います。


安定的雇用を増やすためには労働者派遣法を、規制強化の方向で変えるべきだと思います。また分厚い中間層の高齢者が持っている,1人1人はそれ程大量でなくても、ある程度の額を持っている人たちに、少しずつ使って下さいと促すことが重要だと考えています。


そのために決定的なのは、医療や介護が不足している問題です。ちゃんとした医療介護を受けられないのではないかという医療介護の不安が大きいわけです。ここで不足しているのは、医療の人手と介護の人手です。医療のばあいは医師はともかく、医師以外の不足が問題です。


この領域は重労働低賃金で,なおかつ公的制度によって、どれ位の賃金を払えるかも決定されています。だから我々は過疎地で将来の需要増が見込めない道路工事に使うよりは、介護費用などを増やすべきであるということを一貫して主張してきました。


Q インドネシア記者のリチャードです。東日本大震災の地震の後の民主党の役割についてお願いします。

A 質問の意味がよく分かりません。時の政府の政策なので被災者被害者から様々な批判があるのは仕方がなくて、それには真摯に耳を傾けないといけないと思います。私達の政権で1年半、そのあと自民党政権で3年ほどになりましたが、復興が加速したという声は聞こえません。これはプレッシャーのない環境でヒアリングしてくれたら、そうなると思います。従って質問の趣旨が分かりません。


Q 沖縄について質問です。2009年には最低でも県外移設という公約で普天間を動かすということでした。いま、安倍政権は県の意思を無視して基地政策を進めようとしています。これに対するあなたの党の批判をお願いします。


A 普天間の移設問題について鳩山内閣が失敗したことは、あきらかな過ちとしてお詫びをします。これについてはお詫びを繰りかえしています。実は、なにをまちがえたかというと1つは、あの政策は党として議論して決めたことではなくて、鳩山党首が勝手に考えたことなんですそれを党としてそれを止められなかったことが反省点です。


もう一つの失敗は、アメリカとの二国間関係に関わるものであり、日本側だけで決められるものでないのに、我々だけで期限を切ったというのが間違いです。この手の政策決定をするには、相手国のアメリカと一定の協議、根回しが必要であり、今後も普天間移設をするにはそのプロセスが必要だと考えています。


いま、安倍政権の進めている強行的なやり方は、日本が民主主義国家である以上、継続することは決して出来ません.従って今の辺野古移設は必ず挫折します。私達は過去の失敗があるので無責任に普天間移設を申し上げることはしません。今申し上げた説明の上で、凍結した上で時間をかけて、政府として沖縄と交渉をして、アメリカとも交渉をします。そして両者が納得をするかたちに持って行きます。


Q ドイツの記者です。安倍政権は原子力発電を再開し始めています。これについてあなたは反対ですか?共産党以外は、これについて明確な反対政策を言っていないように見えます。


A 白か黒かさせた方がハッキリしやすいでしょうけれど、そういう問題ではないと思っています。2030年代までに原子力発電を廃止するというのが私達民主党の政策です。それまでの間は原発を稼働しないデメリットと稼働のメリットを考慮しながら、なおかつ周辺住民の理解度によりながら比較衡量をして原発を動かすかどうかを決めるのが責任ある態度だと思います。


私は2012年に経済産業大臣として、大飯原発の再稼働を認める責任者の1人でした。あのときの原発を動かさない場合に生じ得る電力供給へのリスクは、当時の原油価格が高かったのでとても大きかったのです。しかし今の原油価格の元では原発を止めておくことのデメリットは非常に小さくなっていると思います。大飯原発の再稼働の安全計画と、今の原発の再稼働計画を比べると、大飯原発の方が安全度も高かったので、いま原発を再稼働させる必要性はないと私は思っています。


Q フリーの小山(注:元産経新聞記者・国際教養大学客員教授)です。先日自衛隊の陸将が講演して,ビックリしたんですが海外に派遣された自衛隊は、敵から銃を向けられても発砲できない。撃たれてからしか発砲できないわけです。



これは信じられないことで人権問題と思います。あと自衛隊の仲間が人質に取られた場合にはそれの救出にもいけません。

しかも銃撃戦で人を殺したら殺人罪で裁判にかけられるかもしれない。諸々のこういうことは国会で改正できないんでしょうか?


A いまご指摘受けたことのいくつかは改正するべきと私達は国会で主張しています。これは憲法問題とは関係ありません。だから立憲事実と関係の無いはなしをするべきではなく、ちゃんとした議論を積み上げましょうという姿勢でこの前の安保国会に臨みました。今ご指摘を受けたことの1個1個は、70年それが続いていたことなのですぐに変えられることではないでしょうけれど、ちゃんとした議論をすれば解決します。繰りかえしますが、いずれも憲法問題ではなくて自民党が勝手に自己抑制してきたと言うことです。


共産党と組めば逃げる票があり、連立政権は現実的ではない。野党連立の中心はあくまで民主党だ


Q 現実的に野党連合を作って、共産党や小沢氏を加えることができそうですか?


A 共産党とは全く理念政策が違うので、志位和夫さんが言っているように連立政権を組むのは難しいと正直に思っています。野党が別れて選挙を戦うと不利になるという意見もありますが、現実政治では、共産党と私達が組んだら私達から票が逃げるということもあります。それは自民が喜ぶだけなのでそういうことをしっかりと考えないといけないと思います。


いっぽうで、小選挙区という制度にはそれ自体に政権交代というものが組み込まれているので、政権交代というのはいつか起きると思っています。小選挙区制度では第三勢力が伸びることはあります。しかし第三勢力への支持は続かないのが通例でイギリスの例などでもそうです。


日本において第三勢力の波は終わりました。そしてうちが第二党なので、第三勢力への次の波が起きる前に、うちが政権をとればいいということです。


Q 小沢さんに関する質問部分についての返事がなかったですね(笑)。まあ、それはともかく中国との問題、南シナ海問題についてお願いします。


A 小沢先生に限らず野党との連携で主導をしないといけないのは民主党です。私たち民主党が圧倒的な野党第一党なのです。なので、その中に小沢先生が含まれるかどうかは主たるテーマではないと考えています。


南シナ海問題については私達もあそこは公海だという見解です。なので自衛隊の船舶もあそこを通行できるというのが私達の考えですが、果たしてアメリカがそれを日本に望むのかどうかは、別の問題だと思います。現状は非常にシンプルで、あれ(注:中国の海上人口建築物)は島ではないし公海なのです。しかし日本がこの問題に加わることで複雑さを増すことはアメリカも望まないだろうと私は思います。

【江藤貴紀】


 

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