江戸時代末期の浮世絵師らの生き様と町人文化、街並みを写したアニメ映画百日紅が5月9日に公開されるのに先立ち、日本外国特派員協会で5月7日に監督の原恵一氏が試写会に来られ、会見と質疑応答が催されたので、一部を抜粋してお伝えする。
江藤 今回の映画では、典型的なアニメ声優を起用してませんね(注1*)。これは以前監督が仰っていた「アニメの演出や声優の演技特有の気持ち悪さ」を避けたかったからでしょうか?あと、典型的な江戸の時代劇、例えば『必殺!』や『大岡越前』とも違う演出傾向の様に思えますが、これも意図的でしょうか?
原恵一監督 最初の質問は答えたくないんです。10数年前にそのこと(声優の過剰演技が気持ち悪いとか)を言ったら、未だに根に持ってる人がいるからです。
あと、後者の質問に関して言うと、私は単純に杉浦日向子さんの原作『百日紅 (上) (ちくま文庫)“>(さるすべり)』の味を出そうとしただけです。これまでの時代劇がきちんと描いてこなかった江戸時代の面白さを、杉浦さんが描いてくれている気がしたんです。なので原作に選びました。
江藤:CGの使い方について、工夫された点を教えて下さい。CGが得意なProduction I.Gの製作作品になりましたが、もっとCGを使う選択肢もあれば、極端な話すべて手書きのセル画にするという手も理論上はあったと思います。
原恵一監督: 3DCGも使っているけれど、今回はなるべく、そこまで押し出してません。基本的に画の作り方は紙に鉛筆で書くというのが今回の仕事の大元になっています。
例えば、40秒ほどのカメラを(主人公)お栄の周りに回すカットがあるのですが、実は完全に1人の人間の手書きです。普通だと、2Dと3Dのコラボになるのですが、これは違います。3ヶ月をかけて1人で作ったのです。これは日本のアニメーターにしか、書けないシーンです。
(そのアニメーターは誰ですか?という会場記者の質問に対して)これを書いてくれたのは、佐藤雅弘さんという方です。
Q: これは子供が見てもいい内容だと思いますか。
原監督:小学校高学年とかなら、問題ないと思いますよ。僕は、「アニメは子供が見るものだ。安心安全」というものには興味が無い。やはりお客さんに挑戦したいので、この作品を選んだんです。
注1:終わってから調べてみたら主役級以外では、アニメ系でも矢島晶子氏(クレヨンしんちゃんや、新機動戦機ガンダムWのリリーナ役で知られる)などが、茶屋の坊主の役などで起用されていた。ただし、アニメ系と気づかない演技ぶりであった。
会見まで、筆者にはあまり記憶に残る名前でなかったが、原監督はアニメのクレヨンしんちゃんなど撮っておられる、影響力の大きな方であった。あとそのあとで、SNSにおいてこの記事に関して「言ったいわない」の話になっていて、発言内容の報道について間違いがあると申し訳ないので、正確を期すために当日の会見取材テープを起こしたものを掲載する。
(該当箇所は、ここをリンクして再生できる音声テープの、開始してから4分のところである。)